こんにゃくゼリー事故の真相はプライバシーのため説明できない!?
2011/08/12 消費者取引関連法務, 食品衛生法, その他
事件の概要
消費者庁は9日、総務省消防庁から、新潟県柏崎市の6歳の男児がこんにゃくゼリーを食べた際に窒息し、意識を失ったとの通知を受けたと発表した。消費者庁は男児が食べたこんにゃくゼリーの製品名や形状などについては、現在調査中としており、男児の入院先などから事故の状況について聴取していた。その後、10日、消費者庁は、事故は「製品が原因で起きたものではない」との見解を明らかにしたものの、詳しい原因については「プライバシーの問題があり言えない」としている。
消費者庁とこんにゃくゼリー事故との関係
消費者庁は、消費者・生活者が主役となる社会の実現に向けて、平成21年9月1日に発足した。その背景には、相次ぐ食品表示偽装等、国民の生活に関わる問題が多数起こったにもかかわらず、いわゆる「縦割り行政」であったことの影響により、消費者がどこの窓口に相談したらよいか分からず、たらい回しにされたことへの反省がある。その中でも、こんにゃくゼリーによる窒息事故は、個別法令や縦割り行政の狭間で取り締まりできない事案の代表例であった。食品の安全を定める法律には、厚労省の「食品衛生法」と農水省の「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律」(JAS法)がある。しかし、食品衛生法は1条で「衛生上の危害の発生防止」が目的としているが、こんにゃくゼリーは「衛生」の問題ではない。他方、「JAS法」は表示に関する規制なので、一定の形状を禁止することまではできない。まさに、こうした事案に対し迅速に対処することで、消費者庁は組織としての存在理由をアピールできるのである。
事故原因の報道とプライバシーの保護
今回の事故の報道の一環として、消費者庁は、今回の事故原因となったゼリーのメーカーが特定され次第、消費者安全法に基づき、製品の譲渡禁止や回収命令を出すことも視野に入れているとの報道がなされた。また、3年ぶりとみられる今回の事故を受け、消費者庁は9日、消費者に対し、改めて「子供や高齢者は食べない」などの注意を呼びかけていた。福島浩彦長官は「なるべく早く情報を出すのが消費者の利益。今後もできる限りやっていきたい」と述べている。
たしかに、素早い情報提供は被害者の発生を未然に防ぐことにつながる。しかし、消費者庁として誤解を招くような発表を行なったこともまた事実である。今回の一連の報道により、こんにゃくゼリーが原因の事故が起こったとだけ記憶してしまう消費者も多かったのではないだろうか。メーカーにとっては、企業の存続に関わる風評被害である。重大な事故である以上、プライバシーに抵触する部分を伏せて発表し、真実を明らかにすべきではなかったか。今後一層、プライバシーの保護と消費者への迅速な伝達の間の微妙なバランス感覚が求められよう。
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