イギリスでキメラ研究がされていた!? クローン胚規制と法律について
2011/07/26   薬事法務, 民法・商法, その他

概要

イギリスのキングス・カレッジ・ロンドン、ニューカッスル大学、ウォーリック大学の3カ所で、ヒトの精子とその他の動物の卵子を受精させる実験が行われ、155もの人間と動物の混合胚を作っていたことが判明した。
研究リーダーであるロビン・ラベルバッジ教授は、「研究で作られる胚は14日以内に処分しなければならないと法律によって決まっているので、心配することはない」と反論している。

詳細

イギリスでは2008年にヒトの受精及び胚研究に関する法律が制定されており、医療研究の目的の場合はヒトクローン胚の作成を認めている。
今回の事件の研究者達も、この法律に則り、人間の初期発育を解明や不治の病とされる病気を治療するために研究を行っていたとのこと。
しかし、今回、研究内容が世間に明らかになったことで大きな波紋を呼んでおり、3つの機関とも資金不足に陥っているようだ。

各国の遺伝子規制とその特徴

ヒトクローン胚規制については、やはり国民性・宗教性が色濃く出ているようである。
今回の事件の舞台となったイギリスは、世界に先駆けてクローン羊「ドリー」を誕生させたように、あくまで医療研究の目的に限定されますが、比較的ゆるやかな規制を行っている国であると言えます。
この方針の根幹には、「個人の幸福を最大限にまで追求するためには、既存の技術を限界まで使うことが許されるべき」というイギリス人の幸福追求権へのこだわりがあるのではないかという指摘があります。
また、「政治家の発言は聞かないが、科学者のいう事は聞く」というイギリス人の科学理論への信仰も要因の一つに挙げられています。
イギリスと対照的なのはフランスで、原則的にヒトクローン胚の作成は禁止されており、研究過程の余剰胚のみ5年間の期間制限で研究することを認めています。
これには「人間は唯一無二の存在で、あらかじめ予想された存在であるべきでないという点で、ヒトクローンは人間の尊厳に反する」という考えが根底にあり、まさしく「人間の尊厳」をうたった人権宣言を打ち出した国柄が出ています。
では、日本はどうでしょうか。
日本では、クローン技術は「ヒトに関するクローン技術の規制に関する法律」によって規制されており、個人の複製であるヒトクローン胚などを、人や動物の体内に移植して育てることや、人か動物か明らかでない存在を生み出す行為を禁じています。(つまり、今回のイギリスの行為は禁止されます)
一方で、ヒトクローン胚などについて研究することは、文部科学大臣が定める取り扱い指針に従うことを義務づけたうえで許可しています。
これは科学者や産業界の要請に応えたものといえます。

感想

クローン規制に関する法律ですが、理系の最先端技術にも国民性・宗教性による規制の違いが生じてくるという点で、非常に興味深い物であると思いました。
今回の事件では、ゲームや漫画の中ではおなじみの合成獣(キメラ)が生まれていたのではないかという懸念があり、想像すると恐ろしいものですが、研究者達は人間の未来の為に研究していたのでしょうか。
それとも個人的・学術的な興味が暴走したのでしょうか。今後の事件の展開に注目です。

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