菓子原材料の不正表示で農水省が是正指示、産地偽装について
2026/05/28 コンプライアンス, 広告法務, 消費者取引関連法務, 不正競争防止法, 小売

はじめに
5月26日、菓子製造卸の「オークラ製菓」(熊本市)があめの原材料として使っていたニュージーランド産バターの産地を「北海道産」と偽って表示し販売していたなどとして、農林水産省が是正指示を出していたことがわかりました。20の商品で不正表示があったとのことです。今回は産地偽装行為で抵触する法令について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、オークラ製菓は問題となった製品「バターボール」を少なくとも2023年4月~24年12月に約43万袋を販売したとされます。同社は原材料としてニュージーランド産のバターを使用していたにもかかわらず北海道産と表示していたとのことです。
また、バターの産地表示に加え、使用していない原材料「デキストリン」も記載していたとされます。同社では「バターボール」以外にも「沖縄黒糖飴」や「復刻版 塩あめ」など19商品でも不正表示があったとされ、原材料変更などに伴う包装表示の変更にはコストがかかることを理由に不正表示のまま販売していたとのことです。
農水省は食品表示法に基づき表示の是正と再発防止を指示しました。
食品表示法による規制
食品の原産地偽装などの不当表示行為はいくつかの法令に抵触することとなります。ここではまず食品表示法について見ていきます。食品表示法は食品衛生法、JAS法、健康増進法などが一本化してできた法律です。
食品表示法では食品関連事業者は内閣府令で定められた食品表示基準を遵守する必要があるとしています(5条)。食品表示基準では食品の名称やアレルゲン、保存方法、消費期限、原材料、添加物、栄養成分の量や熱量、原産地その他食品関連事業者が表示すべき事項が定められています。2017年改正後は原則として全ての加工食品に対して重量割合上位1位の原材料の原産地表示が義務付けられており「梅(和歌山県産)」「じゃがいも(国産)」などの表示が必要です。
違反した場合には内閣総理大臣、農水大臣、財務大臣が是正指示を出すことができ(6条、7条)、正当な理由なく指示に従わない場合は命令や緊急の必要がある場合は食品の回収や業務停止命令を出すこともできます。また、産地偽装など食品表示基準に違反した場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金となっています(19条)。
景品表示法による規制
次に、景表法を見ていきます。景表法5条では優良誤認表示と有利誤認表示を不当表示として規制しています。まず、優良誤認表示とは、商品またはサービスの品質、規格その他の内容について一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものを言います(同1号)。
次に、有利誤認表示とは、商品またはサービスの価格その他の取引条件について、実際のものまたは他社の同種または類似の商品またはサービスに係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるものを言います(同2号)。
原産地の表示に関する偽装はこれらの不当表示に該当する可能性があると言えます。違反に対しては消費者庁から表示の差止や必要な措置を命ずる措置命令が出され(7条1項)、また売上額の3%の課徴金納付命令が出される可能性があります(8条)。さらに、罰則として2年以下の拘禁刑、300万円以下の罰金またはこれらの併科となる場合があり、法人に対しても3億円以下の罰金が科される可能性があります。
不正競争防止法による規制
不正競争防止法2条1項20号では、商品、役務、その広告、取引に用いる書類等に「原産地」「品質」「内容」「製造方法」「用途」「数量」などについて誤認させるような表示をし、またはその表示をした商品を販売等する行為は不正競争行為の一種である品質内容等誤認惹起行為として禁止されています。
この品質内容等誤認惹起行為を行った場合、当該不正競争行為によって営業上の利益を侵害され、または侵害されるおそれがある者は侵害の停止または予防を請求することができます(3条)。また、故意・過失により不正競争行為を行って他人の営業上の利益を侵害した者はその損害の賠償をする義務を負います(4条)。
さらに、刑事罰として5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金またはこれらの併科となっています(21条2項1号)。
コメント
本件でオークラ製菓は「バターボール」で使用されているバターについてニュージーランド産を北海道産と表示していたとされます。また、その他の19の製品でも同様の不正表示が行われており、また実際には使用していない原材料も記載されていたとのことです。農水省は食品表示法に基づいて是正指示を出しました。また、菓子製造販売の「新杵堂」(岐阜県中津市)も同様の不正表示を行っていたとして同様の指示を出していたとされています。
以上のように現在の食品表示基準では原材料の原産地を適切に表示することが求められている場合があり、それに違反した場合には行政処分や罰則の適用の可能性があります。不正な目的ではなく、パッケージの変更コスト避けるためにそのままにしていたといった場合も同様に違反となります。
自社製品の表示に変更はないか、適切に変更がされているかを今一度確認し、社内で周知しておくことが重要と言えるでしょう。
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