「ZOOM」vs「Zoom」判決―商標権侵害と混同可能性の考え方
2026/04/30 知財・ライセンス, 商標法, IT, メーカー

はじめに
音響機器メーカー「ズーム」がオンライン会議システム「Zoom」のロゴが自社のロゴと類似しているとしてアメリカの運営会社などを訴えていた訴訟で東京地裁が賠償を命じていたことがわかりました。賠償額は計約1億8000万円とのことです。今回は商標権侵害について見直していきます。
事案の概要
報道などによると、音響機器メーカー、株式会社ズーム(千代田区)は、「オンライン会議システム『Zoom』で類似したロゴを使用され、商標権を侵害された」として、アメリカの運営会社と日本の販売代理店に対しロゴの使用の差止めや損害賠償を求めていたとされます。
1983年に設立されたズーム社は電子機器やオーディオ機器の開発販売を手掛けており、東証スタンダードにも上場してます。同社は2005年に「ZOOM」とアルファベット4文字をデザイン化したロゴで特許庁に出願し2006年に商標登録がなされました。
一方で、オンライン会議システムを提供する米「Zoom」社は2011年に米国で設立され、新型コロナウイルス感染拡大によってオンライン会議が普及したことにより知名度が急激に高まっています。
商標権とは
商標法18条1項では、商標権は設定の登録を受けることによって発生すると規定されています。
そして「商標」とは、「人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるものであつて、次に掲げるものをいう」とされ、
(1)業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの
または
(2)業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用するもの
と規定されています(2条1項1号、2号)。
すなわち、事業者が自社の取り扱う商品やサービスを他人のものと区別するために使用するマークが商標ということです。
一般の消費者は商品を購入したりサービスを利用するとき、企業のマークや商品のネーミングである商標を目印として選びます。商標には各企業の営業努力によるブランドイメージや信頼が化体していると言えます。
そして、そのような商標は登録されることにより商標権という知的財産権となります。
商標登録出願の手続き
上でも触れたように商標権は特許庁に出願し商標登録をしなければ発生しません。創作者が創作した時点で自動的に発生する著作権とは異なる点と言えます。
商標登録出願がなされると、特許庁では出願された商標が登録することができるものであるかを審査することとなります。商標登録ができない商標としては、
(1)自己の商品・役務と他人の商品・役務とを区別することができないもの
(2)公益に反する商標
(3)他人の商標と紛らわしい商標
が挙げられます(4条)。
たとえば商品「野菜」についてその箱に「北海道」という文字が記載されていても消費者は北海道産の商品であることを表したものとして認識してしまい、誰の商品かを区別することができないとされます。
次に、国旗と同一または類似する商標や公序良俗に反する商標は公益に反するものとして登録することができません。公序良俗に反するものとしては卑猥な文字や図形、人種差別的な用語などが該当すると言われています。
そして、他人の登録商標と紛らわしい商標としては、たとえば「テルライト」(商品:デジカメ)という商標が既に登録されている場合に、「テレライト」(商品:ビデオカメラ)という商標は紛らわしいため登録することができないとされています。
審査の結果、登録査定となった場合は一定期間内に登録料を納付すると商標登録原簿に設定登録がなされ商標権が発生することとなります。商標権の存続期間は設定登録の日から10年となっています(19条)。
商標権の効力
商標権者は指定商品または指定役務について登録商標の使用する権利を専有するとされます(25条)。そのため、商標登録された指定商品・役務については当然に他人の使用を排除することができます。
また、類似の商標、類似の指定商品・役務についても他人の使用を排除することができるということです(37条)。
商標権者は自己の商標権または専用使用権を侵害する者または侵害するおそれがある者に対してその侵害の停止または予防を請求することができ(36条1項)、侵害行為を組成した物の廃棄、設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができます(同2項)。
また、損害賠償請求も可能で、故意または過失によって自己の商標権または専用使用権を侵害した者に対して自己が受けた損害の賠償を請求する場合には損害額の推定規定も置かれています(38条)。
さらに、商標権侵害行為には罰則が規定されており、故意に商標権を侵害した場合は10年以下の拘禁刑、1000万円以下の罰金またはこれらの併科とされます(78条)。
また、商標権を侵害する行為とみなされる行為(間接侵害)についても5年以下の拘禁刑、500万円以下の罰金となっています(78条の2)。さらに両罰規定により法人に対しても3億円以下の罰金が規定されています(82条)。
コメント
本件で東京地裁は、両者とも「ZOOM」や「Zoom」の文字をデザイン化しており「ズーム」という呼び方や意味内容も同じであると指摘し、全体的に考えれば両者のロゴは一応類似すると言えるなどとして商標権侵害を認めたとされます。
一方で、新型コロナウイルス感染拡大によってZoomのオンライン会議が普及したことにより20年7月以降は一般の利用者が両者を誤認・混同する恐れはなくなったとしました。
以上のように登録されている商標と同じまたは類似する商標の使用は商標権侵害の恐れがあります。この場合には差止や損害賠償、また刑事告訴などを行うことができます。
自社の商標に類似するロゴが使用されているといった場合には、商標権を侵害されているのか、またどのような対応が可能なのかを専門家と相談しつつ対応を講じていくことが重要と言えるでしょう。
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