noteがKADOKAWAに第三者割当増資へ、募集株式発行について
2026/03/26 商事法務, 総会対応, 会社法, IT

はじめに
出版大手の「KADOKAWA」が投稿プラットフォーム大手「note」と資本業務提携し、第三者割当増資を引き受けて100万株取得することがわかりました。出資額は約22億円とのことです。
事案の概要
今回、第三者割当増資を行うとされるnote株式会社は、クリエーターが文章や画像、音声、動画を投稿するプラットフォームを運営しており、会員登録者数は1千万人を超え、7千万近いコンテンツを抱えているとされます。
KADOKAWAは生成AIの普及によりコンテンツ制作の仕組みが大きく変わろうとしている中、クリエーターの作品がより多くの人に届く環境を作るためnotoと資本業務提携し、同社の第三者割当増資を引き受けたとのことです。今後、両社は出版やAIデータ流通、IP創出、ファンコミュニティなどの分野で協業していくとされます。
今回の提携でKADOKAWAはnoteの株式を100万株引受け、4月9日に取得し議決権の5.22%を保有する見通しとのことです。
募集株式発行の手続き
募集株式発行の手続きはおおまかに、(1)募集事項の決定、(2)募集事項の通知・公告、(3)募集株式申し込み、(4)割当決定、(5)払込み、(6)登記となります。
募集株式の発行は株主割当、第三者割当に分かれ、またそれぞれ公開会社、非公開会社でも手続きが分かれます。
(公開会社とは譲渡制限が設けられていない株式を発行している会社を言い、非公開会社とは全ての株式に譲渡制限が設けられている会社を言います。)
まず、公開会社が募集事項を決定する場合、株主割当・第三者割当のいずれも原則として取締役会決議で行います(会社法199条~202条)。例外として特に有利な価格で第三者割当を行う場合は株主総会の特別決議が必要です。
一方、非公開会社の場合は原則として株主総会の特別決議によって募集事項を決定することとなります。こちらにも例外があり、非公開会社が株主割当をする場合は定款で定めることによって取締役に決定を委任することが可能です。しかし、第三者割当の場合はこのような定款規定を置くことはできず、株主総会の特別決議で委任することができます。
第三者割当の際の割当については、募集する株式が譲渡制限株式である場合は取締役会の決議(取締役会非設置会社の場合は株主総会特別決議)で決定し、それ以外の株式の場合は代表取締役等が決定することとなります(204条2項)。
株主に対する通知等
募集株式発行の際には上でも触れたように株主に通知や公告をする必要がある場合があります。
まず、株主割当の場合には申込み期日の2週間前までに株主に募集事項等を通知する必要があります(202条4項、241条4項)。これは割当を受ける株主に検討と準備の期間を与えるためです。
次に、公開会社が取締役会決議によって第三者割当により募集株式を発行する場合には、払込期日の2週間前までに募集事項を株主に通知するか公告する必要があります(201条3項、4項)。こちらは株主割当と異なり、株主に新株発行の差止の機会を与えるためとなっています。公開会社が取締役会決議で発行する場合は既存の株主が知らない間に新株が発行されてしまうというリスクがあるためです。
これらの2週間という期間は総株主の同意がある場合は短縮することが可能です。募集事項の決定日と払込期日または申込み期日との間に2週間の期間がない場合は新株発行後の登記の際に総株主の同意書の提出が要求されることとなります。
支配株主の異動を伴う場合
上記のように公開会社が取締役会決議によって募集株式を発行する場合は原則として払込期日の2週間前までに株主に通知するか公告する必要があります。ここで募集株式発行によって議決権の50%を超えて保有する「支配株主」の異動が生じる場合にはその氏名または名称、住所を株主に通知または公告する必要があります(206条の2第1項、2項)。
従来公開会社は取締役会の一存で新株を発行することによって筆頭株主、支配株主を変えることができていました。しかし、これには海外の投資家などからの批判も強く会社法の平成26年改正によってこのような規定が盛り込まれました。
この通知を受け、総株主の議決権の10%以上が会社に反対の通知をしたときは株主総会決議による承認を受ける必要があります(同4項)。ここでの承認決議は役員選任の場合と同様に定款によっても定足数を3分の1より下げることができません(同5項カッコ書き)。この場合でも会社の財産状況が著しく悪化しており、緊急の必要がある場合は決議は不要です(同4項ただし書き)。
また、引受人が親会社等である場合はこれらの手続きは不要となっています(同1項ただし書き)。
コメント
本件でKADOKAWAはnoteの株式を100万株引受け、議決権の5.22%を保有することとなります。noteは公開会社であることから取締役会の決議によって募集株式発行が可能となっており、また今回は支配株主の異動も伴っていないことから株主総会決議も不要となっています。
以上のように会社法では募集株式の発行について厳格な手続き規定を置いています。公開会社、非公開会社、また株主割当、第三者割当それぞれで手続きが異なってきます。特に期間制限のある手続きなどは期間に不足がある場合など後々トラブルに発展することも有りえます。
新株発行による増資を検討する際にはこれらの規定を踏まえて、期間に余裕をもって慎重に手続きを進めていくことが重要と言えるでしょう。
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