競合より約30円安、ガソリンの不当廉売で村上商事に警告 ー公取委
2026/02/24   コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法, エネルギー関連

はじめに

京都府内の給油所でガソリンを不当に安く販売していたのは独禁法に違反するおそれがあるとして公取委が19日、給油所を運営している「村上商事」(福知山市)に警告をしていたことがわかりました。周辺の競合店より約30円安い価格であったとのことです。今回は独禁法の規制する不当廉売を見直していきます。

 

事案の概要

公取委の発表などによりますと、村上商事は2025年7月~8月に京都府内の国道9号線周辺にある「福知山インターセルフ給油所」と「福知山中央セルフ給油所」の2店舗でレギュラーガソリンを供給に要する費用を著しく下回る価格で継続して供給していたとされます。

公取委はこの行為が周辺地域に所在する他のレギュラーガソリンを販売する事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがあるとして同社に対し警告を発しました。

同社は「地域最安値」をうたい、競合店より約30円安い価格で販売していたとのことです。

 

独禁法の不当廉売とは

独禁法2条9項3号では、「正当な理由がないのに、商品又は役務をその供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給することであって、他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがあるもの」を不当廉売としています。いっぱんにダンピングとも呼ばれる行為で、一定の経済力がある事業者が競合他社を排除するといった目的で採算度外視の低価格で販売する行為です。

公正かつ自由な競争の維持・促進を目的とする独禁法からすれば、効率的な企業努力による低価格販売は本来望ましいものといえます。しかし、採算を度外視した低価格販売は正当な競争者を排除し公正な競争秩序を害するものといえます。そこで、独禁法では一定の要件のもとにダンピング行為を不公正な取引方法の一種として禁止しています(19条)。

以下、具体的に要件を見ていきます。

 

不当廉売の要件

上でも触れたように不当廉売の要件として「供給に要する費用を著しく下回る対価」で販売することが挙げられています。それではこの供給に要する費用とはどのような費用をいうのでしょうか。

公取委のガイドラインによりますと、供給に要する費用とは「総販売原価」をいうとされます。総販売原価とは対象商品の供給に要する全ての費用を合計したもので、製造業では製造原価に販売費と一般管理費を加えたものを指すとのことです。通常の販売業では仕入原価に販売費と一般管理費を加えたものとされています。

そして、総販売原価を「著しく下回る」価格であるかは、その商品を供給することによって発生する費用を下回る収入しか得られないような価格であるかという観点から事案に即して算定されます。供給しなければ発生しない費用である可変的性質を持つ費用さえ回収できないような価格である場合は著しく下回る対価であると推定されるといいます。

このような価格である程度「継続」して販売することも要件となっています。なお、原材料が想定外の高騰により結果として販売価格が費用を著しく下回ったり、生鮮食料品のように品質が急速に低下する恐れがある場合に見切り販売するといった場合は「正当な理由」に該当し適法となるとされます。

 

不当廉売に対するペナルティ

不当廉売に対しては公取委は当該行為の差止やその他必要な措置を命じる排除措置命令を出すことができます(20条1項)。

また、不当廉売は上記の2条9項3号に規定する法定不当廉売の他に、価格基準や継続性のいずれかを満たさない場合でも該当し得る一般指定6項の不当廉売がありますが、法定不当廉売に対しては排除措置命令の他に課徴金納付命令が出される場合があります(20条の2)。

課徴金額は違反行為期間における売上額の3%となっており、不当廉売については課徴金減免制度の対象とはなりません。

これら以外にも不当廉売によって損害を受け、または受ける恐れがある者は不当廉売行為の差止請求をすることができ(24条)、また損害賠償請求をすることも可能です(25条1項)。この場合の賠償責任は故意または過失を問わない無過失責任とされています(同2項)。

 

コメント

本件で村上商事は京都府内でレギュラーガソリンを周辺競合店よりも約30円安い価格で販売していたとされます。詳細な仕入れ価格や費用については不明ですが、公取委は供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給した疑いがあるとして警告を発しました。

以上のように正常な企業努力を超えて採算度外視した低価格で販売する場合は不当廉売として独禁法に違反する可能性があります。
実際に不当廉売と認められるかは様々な諸般の事情を勘案して判断されることとなりますが、可変的性質を持つ費用を下回る場合は該当する可能性は高いといえます。

自社で販売する場合だけでなく、競合他社がこのような廉売行為を行っている場合にはどのような対処が可能かも把握し、備えておくことが重要といえるでしょう。

 

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