消費者庁が3ヶ月間で155商品に改善指導、健康増進法の規制について
2025/12/18 コンプライアンス, 広告法務, IT, 小売

はじめに
消費者庁は、今年7月から9月の3ヶ月間で健康増進法違反のおそれがある155商品(142事業者)について改善指導を行ったと発表しました。加えて、ショッピング・モールの運営事業者に対しても適正表示への協力を求めたとのことです。
事案の概要
報道などによりますと、消費者庁は2025年7月から9月にかけてインターネット上の健康食品などの表示の監視を実施したとされます。その方法は一般的な検索エンジンを用いて関連商品を抽出し、サイト内容を目視で確認するというものだったといいます。
その結果、加工食品や飲料、健康食品など幅広い区分で、「抗酸化作用」「疲労回復」「ホルモンバランス調整」「脂肪燃焼」「美肌効果」「日焼け防止」「勢力増進」「バストアップ」といった多様な効果を断定的に標榜する表示が確認されたとされます。
健康増進法に違反するおそれがある事業者は142に上り、消費者庁は、これらの事業者が取り扱う155の商品に対して表示の改善指導を行いました。同庁は今年4~6月期にも139の事業者、140の商品で改善指導を行っており、不適切表示への対応を強化しています。
健康増進法による規制
健康増進法65条1項では、「何人も、食品として販売に供する物に関して広告その他の表示をするときは、健康の保持増進の効果その他内閣府令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は著しく人を誤認させるような表示をしてはならない」としています。
これは、食品に関して健康の保持増進等が必ずしも実証されていないにもかかわらず、その効果を期待させる虚偽誇大表示を信じた国民が適切な診療機会を逸してしまうなど、健康に重大な支障を来すといった事態を防止することが目的とされます。
対象となる物は、食品として販売に供される物で、生鮮食品や無承認無許可医薬品など明らかに医薬品医療機器等法の適用対象とならない物についても含まれるとされています。
「広告その他の表示」とは、顧客を誘引するための手段として行う広告その他の表示であり、例えば商品の包装、見本、チラシ、パンフレット、ポスター、新聞その他の出版物、放送、インターネットなど幅広く含まれることとなります。
そして、健康の保持増進効果に関する表示とは、「末期がんが治る」「虫歯にならない」「アレルギー症状を緩和する」「疲労回復」「老化防止」「体脂肪を減らす」「血液サラサラ」といった表示を言います。
著しく事実に相違・誤認させる表示
禁止の対象となる誇大誤認表示について、「著しく」とは誇張・誇大の程度が社会一般に許容される程度を超えている場合を言うとされ、表示と実際の相違を知っていれば誘引されることは通常ないであろうと判断できる場合などと言われています。
そして、「事実に相違する」とは広告等において強調されている表示内容と実際に得られる効果等が異なる場合を言うとされます。たとえば十分な実験結果等の根拠が存在しないにもかかわらず、「3ヶ月で○kgやせることが実証されています」などと表示したり、体験談を捏造するといった場合が該当するとされます。
「人を誤認させる」とは、表示から認識することとなる健康保持増進効果等の印象や期待感と実際に得られる効果に相違がある場合を言うとされています。生活習慣を改善するための運動等をしなくても脂肪を排出しまたは燃焼させることをイメージさせる場合や、根拠となる学術データのうち不都合な箇所を無視し有利な部分のみを引用するといった場合が該当します。
違反した場合
消費者庁長官や都道府県知事、保健所設置市長、特別区長は国民の健康の保持増進および国民に対する正確な情報の伝達に重大な影響を与えるおそれがある場合、表示に関して必要な措置をとるべき旨の勧告を出すことができます(66条1項)。
勧告を受けた側が正当な理由なく必要な措置をとらなかった場合、その者に対しその勧告に係る措置を取るべき旨の命令を出すこととなります(同2項)。
この命令に従わなかった場合は、罰則として6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金が規定されています(71条)。
コメント
近年、インターネット上で、十分な根拠が無いにもかかわらず、「体脂肪を減らす」「血圧を抑える」「老化防止」「精力強壮」「バストアップ」「美肌効果」など様々な効果を断定的に謳う表示が散見されています。
健康増進法では、このような食品に関する不適切な表示によって国民が健康に関する適切な情報を取得することが妨げられる恐れがあるとして規制しています。消費者庁でも継続的な監視と法令に基づく措置を講じていく方針とされています。
なお、健康増進法と同様の規定を置いている景表法は規制対象を事業者と消費者としておりますが、実際よりも著しく優良であると誤認されるおそれがある表示をした場合は、優良誤認表示として別途規制される可能性があると言えるでしょう。
自社のHP等の表示を今一度見直して、これらの規定に抵触していないかを確認しておくことが重要です。
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