要件の厳格化を経団連が提言、株主提案について
2025/12/11 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
経団連は12月8日、コーポレートガバナンスに関し、株主提案権の要件を厳格化すべき旨を提言しました。議決権300個要件を廃止すべきとのことです。
今回は会社法の株主提案について見直していきます。
事案の概要
報道によりますと、経団連は12月8日、コーポレートガバナンス(企業統治)に関する提言で、企業の規模や種類を問わず議決権を300個以上保有していれば一律に株主提案ができる現行会社法の規定を廃止すべきと述べたとされます。
その背景として、①近年増加する株主提案に対応する企業の負担の増大や、②アクティビストが短期的利益を追求する目的で業務執行事項に関する提案を行っていることなどを指摘したとのことです。現在では投資単位の引き下げが進んでおり、議決権300個に必要な投資額も減少し、濫用的な株主提案のおそれも指摘されています。
これら以外にも、株主提案の行使期限の見直しや業務執行事項に関する定款変更を目的とする株主提案は認めないとする改正も検討すべきとしており、長期保有株主を優遇する仕組みも提案しているとされます。
株主提案とは
株主提案権とは、一定の株式数を一定期間保有する株主が株主総会で議題や議案を提案することが認められる権利を言います。この制度は株主総会の活性化を図るために導入されましたが、2000年代から濫用的な提案権の行使が見られるようになり、会社法の令和元年改正で一定の制限が加えられたという背景があります。
株主提案権で提案できる議題とは株主総会の目的そのものを指します。たとえば定款変更の件や剰余金配当の件、取締役選任の件といったものです。これに対し、議案とは議題に対する具体的な内容を指します。たとえば取締役としてAを選任する、定款を次のような規定を新設するといったものです。
この権利により、株主総会招集請求権を持たない株主でも能動的に株主総会に議題を提示して他の株主の意向を問うことができるということです。
株主提案の要件
株主提案には具体的に(1)議題提案権、(2)議案提案権、(3)議案の要領通知請求権の3種類が用意されています。
議題提案権は、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求する権利です。議案提案権は、議題に対して具体的な議案を提案する権利です。そして、議案の要領通知請求権は、議案の要領を他の株主に通知するよう請求する権利を言います。
議題提案権と議案の要領通知請求権については、総株主の議決権の1%以上または300個以上を保有する株主に提案が認められています(会社法303条)。当該会社が公開会社である場合は、6ヶ月前から引き続き保有し続けることが必要です。
これに対し、議案提案権は特に株式の保有制限は無く、単独株主権となっています。議題提案権と議案の要領通知請求権は公式期間があり、株主総会の8週間前までに行う必要がありますが、取締役会非設置会社では議題提案権についてはこのような制限はありません。
株主提案の行使制限
上でも触れたように、近年株主提案は増加の一途を辿っており、中には1人の株主が膨大な数の議案を提案するなど濫用的な株主提案権の行使が多発しています。実際に1人で114個の議案を提案したという事例で、権利濫用にあたると判断されたものもあります(東京高裁平成27年5月19日)。そこで、令和元年改正で一定の制限が設けられています。
まず、(1)議案提案権の議案が法令もしくは定款に違反する場合、(2)実質的に同一の議案につき株主総会での議決権10%以上の賛成を得られなかった日から3年を経過していない場合に、会社は株主提案を拒絶することができます(304条ただし書き、305条6項)。
また、取締役会設置会社では議案の要領通知請求に際し、1人の株主が提出することができる議案の数が10個までに制限されています(305条4項)。つまり、10を超える分については拒絶することが可能ということです。
コメント
以上のように、会社法では一定の議決権を保有する株主に株主総会での議題や議案の提案を認めています。近年の濫用的な提案を抑制するため、令和元年改正では一定の制限が設けられたものの、会社の株主提案に対する対処コストは依然として増加傾向にあります。
適法な株主提案を無視した場合、会社法では取締役等に過料の罰則(976条2号、19号)を置いており、また議案の通知請求を無視した場合は株主総会決議取消訴訟の対象となるとされています。
経団連では、300個の議決権保有要件の廃止と業務執行に関する定款変更の提案を禁止する規定の創設を求めています。会社法は従来から改正が多い法令と言えます。これらの動きを注視しつつ、対応の準備を進めておくことが重要です。
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