再販売価格の拘束のダンロップ、改善計画を公取委が認定
2025/08/18 契約法務, コンプライアンス, 独占禁止法, メーカー

はじめに
タイヤを安く売らないよう要求していたことを巡り、公取委がダンロップの提出した改善計画を認定していたことがわかりました。
これにより違反は認定されないこととなります。
今回は独禁法が規制する再販売価格の拘束について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、タイヤ販売大手「ダンロップタイヤ」は2024年10月からオールシーズンタイヤ「シンクロウェザー」を発売し、全国の認定店を通じて販売していたとされます。
同社は今年4月頃まで、希望小売価格を定めた上で自らまたは卸売業者を通じて小売業者に希望小売価格で販売するよう要請していたとのことです。
また、希望小売価格よりも低い価格または実質的な割引を行って販売している小売業者を他の小売業者からの苦情などで把握した場合も、希望小売価格で販売するよう要請していたとされます。
公取委はこれらの行為について独禁法が禁止する再販売価格の拘束に該当する疑いがあるとしていました。
再販売価格の拘束とは
独禁法2条9項4号イによりますと、正当な理由がないのに相手方に対してその販売する商品の販売価格を定めてこれを維持させること、その他相手方の販売価格の自由な決定を拘束することが再販売価格の拘束として禁止されています。
相手方を通じて間接的にこれらの拘束行為を行う場合も同様とされます(同号ロ)。
単にメーカー希望小売価格を設定するだけなら何ら問題はありませんが、その価格以上で販売することを要請したりすると違法ということです。
これにより相手方の自由な価格決定を妨げ、流通業者間での価格競争や消費者の製品選択も阻害することとなるからです。
なお、書籍や雑誌、新聞、音楽CD等は例外的に適用除外となっています。そのため、これらの著作物については定価を定めて販売されています。
再販売価格の拘束の要件
上でも触れたように、メーカー希望小売価格等を定めるだけでは問題となりません。しかし、一定の価格を定め相手方にそれを守らせるよう「拘束」すると違法となります。
公取委の流通・取引慣行ガイドラインによりますと、この拘束が認められるかはメーカーが何等かの人為的手段によって相手方に価格を維持させることについて実効性が確保されているかで判断されるとされています。
価格指示に従わない場合に商品供給を停止するといった行為が典型例と言えますが、実際にあった違反事例としては、指示に従わない場合に経済上の不利益を課したり、課す旨を示唆すること、リベートをカットすること、販売価格を報告させたり調査するなど監視すること、安売り店に卸している業者に安売り店に供給しないよう要請することなどが挙げられます。
正当な理由
再販売価格の拘束は条文上「正当な理由がないのに」と規定されているように、原則として違法となるものの正当な理由があれば例外的に適法となると言えます。
それではどのような場合に正当な理由が認められるのでしょうか。
公取委のガイドラインによりますと、
(1)再販売価格の拘束により実際に競争促進効果が生じてブランド間競争が促進されること
(2)それにより需要が増大し消費者の利益の増進が図られること
(3)当該競争促進効果が再販売価格の拘束以外のより競争阻害的でない他の方法によっては生じ得ないものであること
(4)再販売価格の拘束が必要な範囲および必要な期間に限られること
これらを満たす場合に正当な理由が認められるとされています。
コメント
本件でダンロップは違反被疑行為取りやめの確認、小売業者と消費者、従業員等への周知、再発防止、コンプライアンス措置、第三者による5年間の監視・報告を内容とする確約計画を作成し、公取委が内容の十分性と実施の確実性を満たすとして認定しました。
これにより排除措置命令や課徴金納付命令が免れることとなります。
以上のように、自社製品を供給する相手方に価格の維持を求める場合、原則として独禁法に抵触することとなります。
例外的に正当な理由が認められる場合は適法となりますが、上記のように要件は厳しく、満たすことは困難と言えます。
また、本件のように確約手続きにより行政処分を免れた場合でも、その後確約計画に示した措置を実施しなかった場合には認定が取り消され、通常の処分手続きに移行することとなります。
これらを踏まえ社内で周知し、違反行為が発生しないよう予防していくことが重要と言えるでしょう。
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奥村友宏 氏(LegalOn Technologies 執行役員、法務開発責任者、弁護士)
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