東京証券取引所、売上の過大計上など理由に「オルツ」の上場廃止を発表
2025/08/06 商事法務, コンプライアンス, 上場準備, ファイナンス, 会社法, IT

はじめに
議事録ソフト「AI GIJIROKU」などを提供する「オルツ」が不正会計を行っていたとして東京証券取引所が7月30日、上場廃止を決定していたことがわかりました。
廃止日は8月31日とのことです。今回は上場廃止基準について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、オルツは2021年12月期から23年12月期までの売上高について新規上場申請書類の財務諸表などに虚偽の記載をしていたとされます。
同社は24年10月に東証グロースに上場したものの、25年4月に売上の過大計上の可能性が浮上し、先日第三者委員会の報告書が公開されました。
それによると「AI GIJIROKU」の販売パートナーから受注した売上のほとんどを循環取引しており、売上高119億900万円、広告宣伝費115億5700万円、研究開発費13億1300万円を過大計上していたとのことです。
東証は売上高の大部分にかかる極めて重要かつ巨額な虚偽記載であったとして上場廃止を決定しました。
上場廃止基準とは
株式市場に上場している株式会社が一定の基準に該当したり、または自主的に申請することによって株式市場での自社の株式の売買を終了することを上場廃止と言います。
上場廃止が決定すると、その株式は整理銘柄に指定され投資家に周知されることとなります。その後一定期間の経過で正式に上場廃止となります。
日本には東京証券取引所の他に、名古屋、福岡、札幌に証券取引所が存在し、上場廃止となる基準もそれぞれの証券取引所が各々設けております。
上場廃止となる場合は主に、上場維持基準不適合、有価証券報告書提出遅延、虚偽記載、不適正意見、上場契約違反などが挙げられます。
以下、東京証券取引所の上場廃止基準を具体的に見ていきます。
上場廃止基準
東京証券取引所の各市場共通上場廃止基準としては次のものが挙げられます(有価証券上場規定601条1項1号~20号)。
(1)上場維持基準不適合
上場維持基準に適合しない状態となった時から原則として1年以内に基準に適合しなければ上場廃止となります。
(2)有価証券報告書等の提出遅延
有価証券報告書または半期報告書を法定期限の経過後1ヶ月以内に提出しない場合が該当します。
(3)虚偽記載または不適正意見等
有価証券報告書等への虚偽記載の場合または不適正意見、意見不表明が記載されている場合は直ちに上場廃止にしなければ市場の秩序維持が困難な場合に上場廃止となります。
(4)特別注意銘柄等
内部管理体制等の整備が適切になされる見込みがない場合などが対象となっています。
(5)上場契約違反等
(6)その他
それ以外では銀行取引停止、破産、民事再生、会社更生手続開始、不適当な合併や支配株主との不健全な取引など
宣誓書違反に関する上場廃止
上記以外にも上場会社が新規上場申請時、または市場区分の変更申請時に提出した書類について、必要となる内容を漏れなく記載し、その内容は全て真実である旨の宣誓書を提出したにもかかわらず、虚偽の記載を行うといった場合に、1年以内に上場適格性審査に適合しないときも上場廃止となるとされております。
具体的には、宣誓書違反が判明し、新規上場基準等に適合していないと認められた場合は1年間の猶予期間に入るとされます。その際、審査を受けるための猶予期間に入った旨が投資家に周知されます。
審査の結果基準に適合すると認められた場合は上場維持となります。猶予期間終了日に新規上場基準に準じた基準での適合審査を行っている場合は監理銘柄に指定されます。
猶予期間内に審査申請がなされなかった場合、または監理銘柄に指定され、審査の結果基準に満たないとされた場合は上場廃止となるとされています。
コメント
本件では、オルツの新規上場申請書類において、売上について過大計上がなされており、しかも売上の大部分にかかる重要で巨額なものであったとされています。
これは新規上場にかかる宣誓書で宣誓した事項についての重大違反と認められ、東証は上場廃止を決定したとしています。
ちなみに、オルツの代表取締役は28日付で辞任しています。
以上のように証券取引所での上場および上場維持は厳格な基準を満たす必要があります。
特に不適切会計や虚偽表示、粉飾といった投資家の信用や市場の秩序を著しく損なう行為に対しては厳しい処置が取られることとなります。
新規上場を検討している場合には、これらを踏まえて社内の内部統制体制やガバナンスなど上場会社として相応しい体制作りが重要となると言えるでしょう。
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