公取委がGoogleに排除措置命令、拘束条件付取引とは
2025/04/16   契約法務, コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法, IT

はじめに
公正取引委員会は15日、自社の検索サービスをスマートフォンの初期画面に表示するよう要求したのは独禁法に違反するとして米グーグルに排除措置命令を出しました。巨大IT企業への排除措置命令は初とのことです。今回は独禁法が規制する拘束条件付取引を見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、グーグルは遅くとも2020年7月以降、アンドロイド端末のメーカー6社に対し、アプリストア「プレイストア」のライセンス契約時に検索サービス「サーチ」やブラウザー「クローム」をユーザーの目に留まりやすいスマホの初期画面に設定するよう求めていたとされます。また検索を通じて得た広告収入の一部を分配する契約もメーカーや通信事業者と結んでいたとされ、収益の分配を受けるためにはグーグルのサービスを初期画面に配置する他、他者サービスを搭載しないといった条件全てを満たす必要があったとのことです。公取委はこれらの契約が新規参入や競合他社との取引を妨げていたと認定し排除措置命令を出しました。
独禁法の拘束条件付取引
独禁法では取引の相手方の事業活動を不当に拘束する行為としていくつか行為を禁止しております。まず2条9項4号では再販売価格の拘束が規定されており、これはメーカー等が指定した価格で販売しない小売業者等に対し出荷を停止するなどして指定価格を守らせるといった行為です。次に2条9項6号二の規定を受けて告示で定められている一般指定11項では排他条件付取引が規定されております。これは取引相手に対し他の競争者と取引しないことを条件として取引することをいいます。そしてこれらに該当する行為以外でも、「相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、相手方と取引すること」を拘束条件付取引として禁止しております(12項)。相手方との契約に条件を盛り込むこと自体は契約自由の原則からも本来は問題無い行為と言えますが、「不当に」行われる場合には違法となるということです。
拘束条件付取引の行為要件
上でも述べたように、取引相手に対する拘束行為のうち、再販売価格の拘束と排他条件付取引以外が拘束条件付取引に含まれることとなります。拘束の態様は様々ですが、大きく(1)販売地域の制限、(2)販売先の制限、(3)販売方法の制限などがあります。販売地域の制限としてはいわゆるテリトリー制などがあります。取引先に対し一定の範囲を指定して、それ以外では販売しないよう拘束することです。販売先の制限は、例えば取引先に安売りを行っている小売業者には販売しないよう求めるといった場合です。そして販売方法の制限としては、たとえば取引先に商品の説明販売を義務付けたり、品質管理の条件を課したり、販売コーナーの設置を義務付けると行った場合です。いずれの場合も販売促進の手段として行われることが多いことから、ただちに違法というわけではなく、公正は競争に影響を及ぼす場合に問題となるとされております。
拘束条件付取引の効果要件
上記のように拘束条件付取引は、「不当に」相手方の事業活動を拘束する条件を付して取引することで成立します。それでは「不当に」とはどのような場合を言うのでしょうか。ここで「不当に」とは公正競争阻害性を意味し、拘束条件付取引においては自由な競争を減殺する場合や競争の回避効果が認められる場合を言うとされます。その判断に当たっては、拘束の態様や強度、事業者の規模やシェアといった市場における地位等を総合的に考慮することとなります。また市場に及ぼす効果が競争の減殺や回避を超えて、競争の実質的制限にまで至る場合には不当な取引制限(2条6項)や私的独占(2条5項)に該当する可能性も出てくると言えます。
コメント
本件でGoogleは「GooglePlay」の許諾に合わせて検索ブラウザアプリのプリインストールや有利な配置場所等を要求し、また検索広告の収益の条件として競合する検索サービスを排除することを契約で要求していたとされます。公取委はこれらの行為が事業活動を不当に拘束しているとして排除措置命令を出しました。以上のように独禁法では取引の相手方に不当に条件等をつけて取引することを禁止しております。卸売価格を指定したり、他の競争者と取引しないことを条件とすること、またそれら以外の様々な不当条件が該当することとなります。近年インターネット上での検索分野ではAIによる対話型検索が急速に発展しており、公取委では大手IT企業による不当な取引が新興勢力の参入を阻害するとして警戒しております。自社と取引先との契約に不当な条件が付されていないか、社内でも周知して独禁法違反を普段から防止していくことが重要と言えるでしょう。
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