公取委、フリーランス法に基づき約3万事業者の取引環境を調査
2025/02/19 契約法務, コンプライアンス, 行政対応

はじめに
公正取引委員会は、2月5日、フリーランスに業務を発注する約3万の事業者を対象に、取引の違反行為の有無に関する調査を開始したと発表しました。
今回の措置は2024年11月に施行された、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)、通称、『フリーランス法』を受けて行われています。
公取委、発注事業者対象に調査へ
フリーランス法の施行から3ヶ月以上が過ぎた2月5日、公正取引委員会は発注事業者を対象とした調査を行うと記者会見で発表しました。
法律の施行前に行われた実態調査の結果、建設業、情報通信業、運輸業、卸・小売業、学術研究、専門・技術サービス業などで問題事例が多かったことから、これらの業種を中心に調査が行われるということです。
会見では、「すでにフリーランス側から被害の申告もきている」と明かしています。
調査の中で違反のおそれがあると判断された場合、勧告や命令などの行政処分が行われる予定だということです。また、回答拒否や虚偽の回答があった場合には、フリーランス法に基づき罰金が科されるとしています。
フリーランス法とは
フリーランス法は2024年11⽉1⽇に施⾏されました。
フリーランスへ業務委託を行う発注事業者に対し、取引条件の明示、給付を受領した日から原則60日以内での報酬支払、ハラスメント対策のための体制整備などが義務付けられました。違反が認められれば、公正取引委員会が是正命令などを出し、もしこれに従わない場合には50万円以下の罰金が科されます。
この法律は、業務を委託する「発注事業者」と、業務を受託する「フリーランス」との間の取引に適用されます。ここでいう「発注事業者」については、資本金の金額にかかわらず従業員を使用している全ての事業者が対象となります。
一方で、一般消費者がフリーランスに仕事を依頼する場合や、フリーランスが販売するものを消費者や企業が購入する場合などにはこの法律は適用されません。
フリーランス法が、「発注事業者が遵守するべき事項」として定めている内容は以下のとおりです。
(1)書⾯等による取引条件の明⽰
業務委託をした場合、書⾯等により業務内容や報酬額、支払期日などの取引条件を明⽰すること
(2)報酬⽀払期⽇の設定・期⽇内の⽀払
発注した物品等を受け取った⽇から60⽇以内のできる限り早い⽇に報酬⽀払期⽇を設定し、期⽇内に報酬を⽀払うこと
(3)禁⽌⾏為
フリーランスに対し、受領拒否、報酬の減額、返品、買いたたき、購⼊・利⽤強制、不当な経済上の利益の提供要請、不当な給付内容の変更・やり直しの指示を行わないこと
(4)募集情報の的確表⽰
広告などにフリーランスの募集に関する情報を掲載する際、虚偽表示や誤解を与える表示、不正確な表示などをしないこと
(5)育児介護等と業務の両⽴に対する配慮
6か⽉以上の業務委託について、フリーランスが育児や介護などと業務を両⽴できるよう、フリーランスの申出に応じて必要な配慮を行うこと
(6)ハラスメント対策に係る体制整備
ハラスメントを行わない旨の⽅針の明確化・周知・啓発、ハラスメント相談等に適切に対応するための体制の整備、ハラスメントへの迅速かつ適切な対応 などの措置を講じること
(7)中途解除等の事前予告・理由開⽰
6か⽉以上の業務委託を中途解除したり、更新しない場合には原則30日前までに予告し、フリーランスから理由の開示請求があった場合には応じること
発注事業者において従業員を使用していない場合には(1)のみ、従業員を使用しているが業務委託の期間が1ヶ月未満の場合には(1)と(2)と(4)と(6)、従業員を使用しており業務委託の期間が1ヶ月以上6ヶ月未満の場合は(1)と(2)と(3)と(4)と(6)の義務を負うことになります。
コメント
フリーランスとの取引の適正化を図る目的で行われる、今回の調査。
これまでは、後ろ盾のないフリーランスに対し、杜撰で不公正な取引を強いていた企業も少なくありませんでしたが、今後は、厳しく取り締まられることになります。
特に、フリーランス法の施行前から取引関係にあるフリーランスとの取引実態については、改めて社内調査に乗り出す必要がありそうです。
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