第一生命HDが1株を4株に、株式分割の手続きについて
2025/02/17 商事法務, 総会対応, 会社法, 金融・証券・保険

はじめに
第一生命ホールディングスは14日、1株を4株とする株式分割を行うと発表しました。基準日は3月31日とのことです。今回は株式分割の手続きを見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、第一生命HDは14日開催の取締役会で株式分割を行うことを決定したとされます。これは株式を分割し、投資単位当たりの金額を引き下げることで、投資家層の拡大を図ることを目的としているとのことです。分割割合は1株につき4株で基準日は3月31日とされ、現在約9億5000万株の発行済株式総数が、40億株となる見通しです。基準日公告は3月の上旬を予定しており、効力発生日は4月1日となっております。なお今回の株式分割に伴い、発行可能株式総数を増加させる定款変更も検討しているとされております。また資本金の額に変更はありません。
株式分割とは
株式分割とは、発行されている株式を細分化して従来よりも多数の株式にする行為を言います。株価が高騰しすぎた場合に株価を引き下げたり、株式数を増加させてその株式の市場での流動性を高めたり、分割後の株式数で配当をすることによって実質的な増配や株価上昇の利益を株主にもたらせるといった機能があると言われております。株式分割は既存の株式を一定の割合で分割するものであることから、株主の保有割合に何ら実質的な変動を生じさせないので、株主に差止請求や株式買取請求権は用意されておりません。そのため手続きも株式併合と比較して簡易なものとなっております。以下具体的に見ていきます。
株式分割の手続き
株式分割を行おうとするときは、その都度取締役会で決定する必用があります(会社法183条2項柱書)。取締役会非設置会社の場合は株主総会の普通決議が必用となります。その決定に際しては、分割により増加する株式総数の分割前の発行済株式の総数に対する割合および基準日、効力発生日、種類株式発行会社である場合は分割する株式の種類を定める必用があります。基準日に株主名簿に記載されている株主は効力発生日に保有する株式に分割割合を乗じて得た数の株式を取得することとなります(184条1項)。なお株式分割に際しては、その分割割合を乗じて得た数の範囲内であれば株主総会の特別決議を経ることなく、発行可能株式総数を増加させる定款変更が可能です(同2項)。通常であれば定款変更には株主総会を要します(466条、309条2項11項)。
株式併合の場合
株式を分割して増加させる行為とは逆に、株式を圧縮して減少させる、株式併合という行為があります。こちらは市場で増加しすぎた自社株を適切な数にし、適正な株価を形成させるといった場合に用いられます。株式の数や株価を調整するという意味では株式分割と似ておりますが、その手続は株式分割に比して非常に厳格なものとなっております。株式併合は併合割合によっては株主が有する株式に端数が生じ、また昨今M&Aの最終局面でのスクイーズアウトにも用いられることから組織再編と同様の規制を受けております。まず決定に際しては株主総会での特別決議が必用で(180条2項)、効力発生日における発行可能株式総数を定める点が特徴です。また公開会社の場合、発行可能株式総数は発行済株式数の4倍を超えてはならないという、いわゆる4倍ルールも適用されます(同3項)。そして組織再編の一種であることから事前・事後の書面等備え置き(182条の2、182条の6)や差止請求(182条の3)、反対株主の買取請求(182条の4)が用意されております。
コメント
本件で第一生命HDは4月1日を効力発生日として1株を4株とする株式分割を行う予定です。これにより投資単価を引き下げ、より投資しやすい環境を整備するとしております。また来年4月に社名を「第一ライフグループ」に変更することも決定されており、今年6月の定時株主総会に諮るとされます。以上のように株式分割は取締役会決議だけで決定することができ、またその分割割合の範囲内であれば株主総会によらずに発行可能株式総数の変更も可能です。なお基準日を定め、基準日の2週間前までに公告をすることが求められております。また効力発生日の2週間以内に登記をすることも必用です。株式分割は上がりすぎた株価を適切に調整する機能があります。自社の株価や投資単価、また配当など株式の適切な管理の選択肢として把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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