下請業者に30年以上、金型無償保管させた疑いの自動車部品メーカーに勧告
2025/02/06   契約法務, コンプライアンス, 下請法, メーカー

はじめに
公正取引委員会は1月23日、下請事業者に金型を無償で保管させていた下請法違反(不当な経済上の利益の提供要請)があったとして、自動車部品メーカー、東京ラヂエーター製造株式会社に対し、保管費用の支払いなどを求める勧告を出しました。
中には30年以上も無償で保管していた下請事業者もあったということです。
外部の倉庫で金型保管したケースも
勧告を受けたのは「東京ラヂエーター製造」です。トラックやバスのエンジンの熱交換器等を製造・販売する事業などを行なっています。製品や部品の一部は下請事業者に製造を委託していて、必要となる金型を貸していたということです。
公正取引委員会によりますと、東京ラヂエーター製造は遅くとも2022年12月以降、金型計2,389個を下請事業者30社に対して無償で保管させていました。さらに、無償で保管させていた期間、東京ラヂエーター製造は下請事業者へ製品や部品の発注などを長期間行っていませんでした。
報道などによりますと、金型は一般的には数百キロ以上で、最も重いものだと1個あたり4トンを超えていたということです。重い金型を管理する場合、自社の敷地では管理できず、外部の倉庫を借りて対応しなければならなかった下請事業者もみられました。1993年以降使われていなかった金型を保管させていたケースもあったということで、何十年もの間続いてきた慣習とみられています。
東京ラヂエーター製造は下請事業者と金型の一部廃棄に向けた話し合いを進めています。また30社との間で保管費用に相当する額についても協議がされていて、今後決定されるということです。
東京ラヂエーター製造は「本勧告を厳粛に受け止め、今後の取引において下請法に抵触する行為が発生することのないよう、金型の適切な管理に留意した下請法の教育を従来の教育体系から見直す」とコメントしています。
自発的申出制度について
無償保管が商慣行として長年にわたり継続されてきたことを問題視した公正取引委員会は、東京ラヂエーター製造に対して「自発的申出制度を活用して自主点検するよう」呼びかけました。
自発的申出制度とは、下請法違反行為を行った親事業者が公正取引委員会に対して自発的に違反行為を申し出る制度です。
公正取引委員会が自発的申出について審査を行い、要件を満たしていると認められた場合には勧告を行わないことになります。親事業者の自発的な改善措置が、下請事業者が受けた不利益の早期回復に資すると考えられるからです。
自発的申出の要件は以下のとおりです。
(1)公正取引委員会が当該違反行為に係る調査に着手する前に、当該違反行為を自発的に申し出ていること
(2)当該違反行為を既に取りやめていること
(3)当該違反行為によって下請事業者に与えた不利益を回復するために必要な措置を既に講じていること
(下請代金を減じていた当該事案においては、減じていた額の少なくとも過去1年間分を返還していること)
(4)当該違反行為を今後行わないための再発防止策を講じていること
(5)当該違反行為について公正取引委員会が行う調査及び指導に全面的に協力していること
コメント
金型の保管については、保管期間の長さ、保管スペースの占有、管理の難しさ(防さび処理など)などの問題から、相応のコストがかかりますが、それらのコストを下請事業者に負わせる親事業者は後を絶ちません。
こうした問題の解決に向けて、上述の「自発的申出制度」の活用が期待されますが、近年、新規の自発的申出件数は低迷しているといいます。
制度がしっかりと活用されるよう、周知啓蒙して行く必要がありそうです。
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 浅田 一樹
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 登島和弘 氏(新企業法務倶楽部 代表取締役…企業法務歴33年)
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 杉谷 聡
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