「エルゴヒューマン」の再販価格拘束で関家具に排除措置命令 ー公正取引委員会
2024/11/07 コンプライアンス, 独禁法対応, 独占禁止法, メーカー, 小売

はじめに
高級チェア「エルゴヒューマン」を安く売らないよう小売業者に求めていたとして、公正取引委員会は5日、独禁法違反の疑いで排除措置命令を出す方針を固めました。今回は独禁法が規制する再販売価格の拘束について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、家具卸売大手「関家具」(福岡県大川市)は遅くとも2020年2月頃から、同社が扱う高級多機能オフィスチェア「エルゴヒューマン」について、小売店に事前に提示した価格よりも値引いて販売しないよう、家具量販店やインターネット通販会社などの取引先に求めていたとされます。同社は要請に応じない取引先に対しては、卸値の引き上げを示唆する場合もあったとのことです。公取委は同社に対し、独禁法が禁止する再販売価格の拘束の疑いで排除措置命令を出す方針を固めたとされます。
再販売価格の拘束とは
再販売価格の拘束とは、メーカーやメーカーの販売会社が、自社の商品を購入する卸売業者、またはその卸売業者から購入する小売業者に販売価格を指示してその価格で販売させる行為を言うとされます(独禁法2条9項4号)。これにより流通業者間での自社製品の価格競争がなくなり、事業活動の自由や消費者の選択を阻害することから独禁法では原則として禁止されております。メーカーがメーカー希望小売価格を示しているだけでは問題ありませんが、これを参考価格として示すにとどまらず、メーカーからの何らかの人為的な手段でその価格で販売せざるを得ない状況を作り出した場合は再販売価格の拘束に該当することとなります。違反した場合は排除措置命令(20条)の対象となるだけでなく、課徴金納付命令の対象ともなっております(20条の5)。課徴金納付命令は、過去10年の間に再販売価格の拘束で排除措置命令を受けたことがあるといった場合に出されることとなります。
再販売価格の拘束の要件
再販売価格の拘束が成立するためには、販売業者の自由な価格決定を「拘束」する必要があります。上でも述べたようにメーカ希望小売価格や標準小売価格を示すだけでは該当しません。拘束には文書や口頭による契約で定めたり、同意書を提出させるといった直接的な拘束から、価格の指定に従わない場合に出荷価格を引き上げる、出荷量を減少させる、リベートを削減するといった間接的なものもあり得ます。実際に拘束として認定された例としては、営業担当者による小売店の巡回、秘密番号制による転売経路の確認、試買による価格・転売状況の確認などがあります(審決平成3年8月5日等)。再販売価格の拘束での公正競争阻害制は市場における自由な競争の減殺と言われております。
正当な理由
再販売価格の拘束は、「正当な理由」がないのに行った場合に違法となります。逆に言うと正当な理由があれば問題がないということです。それではどのような場合にこの正当な理由が認められるのでしょうか。一般的に正当な理由に該当しうる場合として、価格拘束によりブランド間の競争が促進される場合、消費者の利益の増進が図られている場合、他の方法によっては競争促進効果が生じない場合、必要な範囲で必要な期間内での拘束である場合などが挙げられております。しかし判例では、価格拘束によってブランド間競争が促進されたとしても、必ずしも販売業者間の自由な競争がなされる場合と同様の経済効果をもたらすものでない以上、競争阻害制は否定できないとしており、正当な理由が認められる場合はかなり稀と言えます(最判昭和50年7月10日)。
コメント
本件で関家具は、自社が販売しる高級オフィスチェアに関し、家具量販店やインターネット通販会社に提示した価格よりも値引いて販売しないよう求め、要請に応じない場合には卸値の引き上げを示唆していた疑いが持たれております。これが事実であった場合は、間接的な拘束行為による再販売価格の拘束が成立する可能性が高いと言えます。以上のように独禁法では、自社製品を卸す際に、価格競争を阻害するような価格拘束を禁止しております。一応正当な理由がある場合は適法となりますが、一般的に価格拘束を正当化することは困難と言えます。最近でも日清食品が一部のカップ麺で店頭価格を拘束したとして公取委から警告が出されました。原材料の高騰が続く昨今、製品の価格上昇、価格維持を行わなければ採算が乗らない場合も予想されますが、独禁法上の規制についても今一度見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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