便利なICカード乗車券、知らずに運賃過払いの危険
2011/06/14 法務相談一般, 民法・商法, その他

不当に高かった、東急世田谷線
東急電鉄は、昨年8月9日から今年6月1日まで、PASMOとSuicaによる乗車について、9万8490円の運賃の取りすぎがあったことを発表した。読み取り機の二重引き落としを防止する設定を忘れたことが原因であったという。東急世田谷線は140円の定額制であり、被害の件数では717件にものぼる。
改善されない、ICカード乗車券トラブル
ICカード乗車券の運賃トラブルは、全国各地の鉄道、バスで頻繁に起こっている。2007年3月には小田急電鉄が、2008年7月にはJR東日本が運賃の取りすぎを発表した。また、2007年11月には、首都圏のバス会社が加盟するバス共通ICカード協会がバス運賃の二重引き落としが約6万件発生しており、被害額1100万円に上ることを発表した。
なぜ、改善されないのであろうか。運賃取りすぎの主な原因は、読み取り機械の設定ミスと運転手等の機械の操作ミスである。双方とも単純な人的ミスであり、サービスを提供する側の管理体制の甘さは否定できない。
返金への問題点
運賃の過払い分が不当な利得になることは明らかであり(民法703条参照)、その返還を請求することは、法律的には問題はないだろう。だが、個々の被害者への実際の返還の場面では、そうスムーズにいくだろうか。多数の被害者の利用履歴を確認する作業はそう簡単なものでない。またICカードを紛失した者や、履歴確認ができないため自分が被害者と気付けない者に対する返還も困難を伴うであろう。今やICカード乗車券は多くが利用する一般的なものであり、そのサービスを提供する側はその責任をもっと自覚するべきである。
民法703条
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
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