パナソニック、カメラ新製品サイトで素材サイトの画像を使用し謝罪
2024/06/06 コンプライアンス, 広告法務, 消費者契約法, 景品表示法, メーカー

はじめに
家電メーカー大手の「パナソニック」は、ミラーレス一眼カメラの新製品を紹介するサイトで、有料素材サイトの画像を掲載したとして、謝罪しました。
また過去の製品紹介ページでも、素材サイトからの画像が使用されていたことが発覚し、会社は今後、サイトの全体的な見直しを行うとしています。
カメラの製品紹介ページに人物画像や風景画像などがあった場合、多くの人は、それらを「当該カメラで撮影した画像」と推定する傾向があります。そのため、素材サイトの画像を、あたかも当該カメラで撮影したものであるかのように製品紹介ページに使用した場合、景品表示法が禁じる「優良誤認表示」に当たるのではという声も上がっています。
注意書き小さく疑問噴出
今回、問題となったページで紹介されていたカメラは、パナソニックエンターテインメント&コミュニケーション株式会社が開発したもので、2024年6月中旬に発売予定の新型ミラーレス一眼カメラ「LUMIXDC-S9」です。価格は本体のみで20万円を超えています。
ページで使用されていた有料素材サイトの画像は犬が芝生を走る様子が映されたもので、動物認識のオートフォーカス機能や、新製品の目玉であるリアルタイムLUT(色表現・色編集)機能などの説明に使用されていました。
こうした製品紹介ページの作り方に、カメラ愛好家から疑問の声が多く上がりました。
一般的にカメラはメーカーや製品モデルなどによって、色の出方や写り具合が異なります。そのため、消費者は、カメラで撮影した画像がどのような写り方をするのかチェックしてから購入を検討するといいます。
最終的には店頭で実際に試し撮りをして購入をするケースが多いと言われていますが、当然製品の紹介ページも参考にするといわれています。
パナソニックは、製品紹介ページ内に「画像・イラストは効果を説明するためのイメージです」との注意書きを記載していましたが、文字が小さく、わかりにくいことから、「誤解してしまう」といった意見が相次いだといいます。
パナソニックは、「誤解を与える画像だった」として、5月28日、新製品のカメラで実際に撮影した画像への差し替えを行いました。
さらに、過去に販売した機種の製品紹介ページでも、素材サイトからの画像が使われていたことが発覚し、修正が行われています。
パナソニックは、今回の事態が起きた原因として、「これまで社内で、LUMIX製品のサイトに使用する画像のルールが明確化されていなかった」と説明。画像の詳細確認を徹底するという意識を欠いたことにより、サイト制作における適切な画像チェックプロセスが損なわれたということです。
今後の対応として、現在、LUMIX製品の紹介サイトで使用している画像の確認を行い、必要に応じて修正を行うとしています。
また、今後制作するLUMIX製品の紹介ページにおいても、
・全て自社カメラ製品で撮影した画像を使用する
・使用する画像については使用機材を明記する
とルールを明確化し、再発防止を徹底すると発表しました。
優良誤認との指摘も
今回問題となった製品紹介ページで使用されていた画像については、有料素材サイト側でどのようなカメラで撮影したかが不明で、実際の製品と性能の異なるカメラで撮影された可能性が高いとされています。そのため、消費者が製品を購入後に画像を撮影しても、製品紹介ページで紹介されたような画像が撮影できないおそれがありました。
そうした理由から、景品表示法で禁じられている「優良誤認」に当たるおそれがあるとの指摘もあります。
景品表示法では、商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものよりも著しく優良である又は事実に相違して競争事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示を優良誤認表示として禁止しています。
優良誤認表示に該当するか否かは、その商品の性質、一般消費者の知識水準、表示の方法、表示の対象となる内容などを基に、表示全体から判断されますが、優良であると誤認される表示が、「著しく」程度を超えているかが、しばしば焦点となります。
この点、著しいか否かは、当該表示を誤認して顧客が誘引されるか否かで判断されます。誤認がなければ顧客が誘引されなかっただろう、と認められる程度の誇大表示であれば「著しく優良であると一般消費者に誤認される」表示に当たります。
事例でわかる 景品表示法 消費者庁 不当景品類 及び 不当表示防止法 ガイドブック(消費者庁)
コメント
今回のケースが、優良誤認表示に当たるか否かの判断には、製品紹介ページで使用した有料素材サイトの画像と、「LUMIXDC-S9」で実際に撮影した画像のクォリティの比較が必要となるため、判断が難しいところです。
しかし、消費者がカメラを購入するときの判断材料としている製品紹介ページに、別のカメラで撮影した画像を使用したことは、消費者からの信頼を失わせるに足る重大な失態だったといえます。
近年、WEBサイトを通じて、自社商品の情報発信を行う企業が増加しています。その際、優良誤認表示とならないよう、テキストの内容に注意を払うのはもちろんのこと、取り扱う商材によっては、使用する画像などにも注意する必要がありそうです。
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