ごま油の卸売りでカルテルの疑い、メーカー4社に立ち入り検査 ー公取委
2024/03/21   コンプライアンス, 行政対応, 独禁法対応, 独占禁止法, 食料品メーカー

はじめに


ごま油の卸売価格つり上げのためにカルテルを結んだ、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いがあるとして、公正取引委員会は3月13日、食用油メーカー4社に対し、立ち入り検査を行いました。

 

ごま油の卸売価格つり上げを目的にカルテルを結んだ疑い


報道などによりますと、今回、立ち入り検査を受けたのは以下の4社で、検査はそれぞれの本社や支店など合わせて19ヶ所で行われたということです。

・日清オイリオグループ株式会社
・竹本油脂株式会社
・九鬼産業株式会社
・かどや製油株式会社

年間約450億円に上るごま油市場は、上記4社がそのシェアの大部分を占めていますが、この4社において、営業担当者らが直接面会したり、電話で連絡を取り合うなどして、卸売業者向けに販売するごま油の価格を不当につり上げるカルテルを結び、独占禁止法に違反した疑いが持たれています。

ごま油の原料であるゴマは、主にアフリカから輸入していますが、現地の政情不安などの影響もあり、ここ3年間で輸入価格がおよそ2倍になっているといいます。そのため、昨年末にメーカー各社は相次いでごま油の値上げを発表していました。その傍ら、この政情的要因を利用し、4社が卸売価格つり上げに向けての協議を行っていたとみられています。

卸売り価格のつり上げを図った理由として、

①大口顧客からの値下げ要請への対抗
②安定的な収益の確保

などが考察されており、厳しいビジネス環境下で各社間の値下げ競争を避けるため、カルテルが結ばれた可能性が指摘されています。
なお、カルテルは長期間にわたり、複数回行われていたとも報道されています。

今回、立入検査を受けた各社は、ホームページで公正取引委員会からの立入検査があったことを認め、調査に対し全面的に協力していくと発表しました。

 

カルテルの問題点


カルテルとは、事業者または業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合い、本来は各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決める行為で、独占禁止法上、「不当な取引制限」として禁止されています(独占禁止法第3条、第2条6項)。

カルテルが横行してしまうと、「高品質の商品・サービスをできるだけ安価で提供する」という市場における健全な競争原理が阻害され、消費者に不利益を強いることで、事業者が不当に利益を得ることに繋がるためです。

カルテルの典型的な形態として、販売価格そのものや上下限について合意する“価格カルテル”、商品の生産量や販売量を制限する合意により商品価格高騰を狙う“数量制限カルテル”、担当地域を分け同一地域内での競争をなくす“市場分割カルテル”などが挙げられます。

こうした、わかりやすく競争制限を目的とするカルテルが取り締まりの対象となる一方、一見、競争制限以外を目的としたカルテルも取り締まりの対象となる可能性があるため、注意が必要です。いわゆる非ハードコアカルテルと呼ばれる類型です。

■非ハードコアカルテル
非ハードコアカルテルとは、競争制限とそれ以外の目的を併有するカルテルを指します。例えば、環境保護を目的とする共同行為、社会公共や地震などの緊急事態での共同行為などが該当します。非ハードコアカルテルの全てが独占禁止法に違反するわけではありませんが、客観的に反競争効果が明白で、これを補うような競争促進効果若しくは正当化事由を持たないことが外見上明らかなカルテルについては、取り締まりの対象となります。

 

非ハードコアカルテルとして、ガソリンスタンドが警告を受けた事例
福井県に所在する13給油所において、自ら又は子会社を通じて、平成23年5月2日から同年12月4日までの期間のうち一定期間、レギュラーガソリンについて、その供給に要する費用を著しく下回る対価で継続して供給し、当該給油所の周辺地域に所在する他のレギュラーガソリンの販売業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑い。
 
一時的コスト割れを起こしたことなどを問題視をされていましたが、寄与度に疑問があるとして排除命令ではなく、警告となったということです。


【参考リンク】
最近の石油製品小売業者による不当廉売事件(公正取引委員会)

 

コメント


健康とウェルネスへの関心の高まり、エスニック料理の人気の高まりなどにより世界的な需要の拡大が見られるごま油市場。そこに、円安や政情不安などの事情が重なり、輸入価格の高騰に各社が四苦八苦している様が見てとれます。他方で、食料品を中心とする物価高で家計を圧迫されている世帯も少なくないと言われています。

市場における健全な競争が求められる一方、価格競争の激化は、労働問題や環境問題、商品やサービスの品質低下などにつながるおそれがあります。この窮状に各社がどのような戦略をとるべきか、非常にデリケートな判断が求められます。

 

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