崩れたクリスマスケーキで高島屋が謝罪、責任の所在は?
2023/12/28   契約法務, 危機管理, 民法・商法, 小売

はじめに


オンラインで販売したクリスマスケーキが、購入客の元に届いた際に崩れた状態になっていたとして、大手百貨店・高島屋は12月27日、ホームページ上で謝罪を行いました。12月26日時点で1,200 件を超える問い合わせが来ているとのことです。

 



被害の状況


高島屋の発表によると、問題となったケーキは、クリスマスにあわせて予約販売されたもので、レストランの監修のもと埼玉県羽生市の菓子メーカーによって製造されたイチゴショートケーキとのことです。

購入した客が撮影した写真がSNSに投稿されたことで注目を集めましたが、その後も、同様にケーキが崩れていたとする投稿が相次いで見られました。高島屋には、12月26日時点で本件に関し1200件以上の問い合わせが寄せられたといいます。

 

高島屋は原因調査も行っていますが、調査の結果、

・商品の製造委託先において、商品製造後の冷凍保管期間中の温度管理やサンプル検査における中心温度は適切であったこと

・製造工程においては昨年と凍結時間に変更があったものの、事前の凍結試験や実際のサンプル検査において問題はなかったこと

 

などが明らかになったということです。

また、配送委託先であるヤマト運輸においても調査が行われており、集荷から仕分け基地への輸送までの各段階において、規定の温度で管理されていたこと、集荷に使用した車両においても故障などはなかったことが確認されているといいます。

 

一連の調査報告を受け、高島屋としては、原因の特定は不可能と判断しています。その一方で、生産から流通を含め、商品を購入者の手元に届けるまでが販売者の責任であるとして、本件に関する全責任は高島屋にあると述べています。

さらに、原因特定に至らなかった管理体制も問題視しており、今後は、サプライチェーンの各段階の取引先との関係強化等により、再発防止につなげる考えです。

 

高島屋は謝罪を行うと共に、およそ800個のケーキで同様の破損が確認されたとして、返金や商品交換などの対応を行うとしています。

ケーキは消費税込みで5400円、2900個がネット通販限定商品として販売されていて、冷凍の状態で23日から24日にかけて配送される商品だったということです。


責任はどこに?


今回のように届いた商品に破損が見られた場合、購入者は、販売元・配送業者どちらに責任追及したらよいのでしょうか。

個別の事例によって異なるところはありますが、購入者はどちらに対しても責任を問うことができます。もっとも、直接の契約関係がある販売元に対しては、契約上の責任(契約不適合責任:民法第562条ないし564条)を問える一方、配送業者に対しては不法行為責任(民法第709条)を問う形となります。

そのため、仮に裁判で配送業者の責任を追及する際は、配送業者の故意・過失の立証を購入者側で行わなければならないことになります。裁判での立証まで見据える場合、販売元の責任を追及するほうが購入者にとって負担が小さいといえます。

■販売元が負う契約不適合責任
納品された目的物があらかじめ決めていた種類や品質、数が注文した内容と異なるなどの場合に、売主が負担する責任(債務不履行責任の一種)。


①追完請求権(改正民法第562条)
購入者は修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しのいずれかの請求が可能。一方、販売元は代替え品を納品するという交渉も可。


②代金減額請求権(改正民法第563条)
購入者が①を催告をしても、一定期間内に履行の追完がないときに、代金の減額を請求するもの。また履行の追完が不能なケースなどには追完の催告なく代金減額請求が可能。


③損害賠償請求権(改正民法第564条,第415条)
債務不履行の一般規定に基づいて実施(販売した側に責任がある場合のみ行使可)。


④解除権(改正民法第564条,同第541条,同第542条)
追完請求が功を奏さない場合に、債務不履行の一般規定に基づいて実施。



コメント


昨年は、百貨店が大晦日に配送予定だったおせち約580個のうち約250個を、運送会社が集荷センターで降ろし忘れたことで一部の購入者に届かなかったトラブルもありました。その後、百貨店は遅配となった購入者に謝罪し、全額返金の対応なども行ったといいます。

特に、注文数・配達数が多い時期には、さまざまな要因でトラブルが発生します。改めて、各工程・各サプライヤーの管理体制、契約内容の確認を行うことが重要です。

 

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