ホテル予約サイト「アゴダ」の利用規約に不当条項?消費者団体が差止請求訴訟を提起
2023/12/27 契約法務, 消費者取引関連法務, 消費者契約法, IT
はじめに
アジアを中心にホテルなどのオンライン予約を取り扱うウェブサイト「アゴダ」。そのアゴダの利用規約の中に、消費者の利益を一方的に害する不当な条項があるとして、NPO法人が消費者契約法に基づき、該当条項の使用差し止めを求める訴訟をさいたま地裁に提起しました。
利用規約の条項削除求め提訴
NPO法人「埼玉消費者被害をなくす会」は、12月6日、シンガポールに本社を置くAGODA COMPANY PTE.LTD. と、東京に本社があるAgoda International Japan株式会社に対して、消費者契約法に基づく差止請求訴訟を起こしました。
訴状などによりますと、旅行サイトの「アゴダ」の利用規約では、いかなる場合でも損害賠償責任を負わない、仮に負うとしても旅行商品の合計額または250米ドルのうち低い金額を超えないとした内容が記載されているほか、利用者の予約を「理由なくキャンセルする権利を有します」などと定められてるといいます。
また、「アゴダ側に債務不履行や過失があった場合でも損害賠償請求などの法的責任を負わない」とする条項もあり、埼玉消費者被害をなくす会は、これらは消費者契約法第8条1項1号及び3号、消費者契約法第10条に違反する不当な条項であると主張しています。
埼玉消費者被害をなくす会は、(1)こうした契約条項を含む意思表示を行わないこと、(2)これらの内容が記載された利用規約のインターネット上での掲載を取りやめることなどを求めています。
事の発端は、2019年11月ごろ、サイト利用者から埼玉消費者被害をなくす会に「アゴダで香港のホテルを予約したが宿泊できず、返金もされなかった」との相談が持ちかけられたことでした。相談を受けた同会が消費生活センターにヒアリング調査を行ったところ、
・場所や写真がサイト表記と違っていたがアゴダ側が対応しなかった
・予約キャンセルなどで適切な対応が行われず返金が拒否された
などの相談やクレームが来ていたことが分かったといいます。
同会はアゴダ側に条項の差し止めを求めましたが、変更できないとする回答があったため、今回の提訴に踏み切ったということです。
消費者契約法「無効」とは
今回、埼玉消費者被害をなくす会が差し止めの根拠とした消費者契約法。一般的に、消費者は事業者よりも取引についての知識・経験・交渉力が乏しいため、不利な契約を結んだり、誤認に基づく契約などを行い、後日のトラブルに繋がるおそれがあります。そこで、こうした契約トラブルから消費者を守るために「消費者契約法」が制定されており、以下の類型の条項を無効(契約書に記載されていても効力が生じない)としています。
(1)事業者の損害賠償の責任を免除する条項(第8条)
(2)消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等(第9条)
(3)消費者の利益を一方的に害する条項(第10条)。
今回のケースでは、アゴダの利用規約の一部が第8条1項1号及び3号、第10条に抵触するのではとされています。
第八条 次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。 |
コメント
消費者契約法にまつわる裁判例としては、「中途退学時の学費返還は原則として行わない」と定めた予備校の契約条項が第9条1号により無効となるとして、条項の差し止めが認められた事例があります。
その一方で、携帯電話の利用契約(2年間)を中途解約する際、解約料の支払義務があることを定める条項が第9条1号や第10条に違反するとして条項の使用差止めを求めた訴訟では、一審・二審ともに原告側の請求が棄却されています。
線引きが難しい消費者契約法に基づく条項無効。今回の訴訟ではどのように判断されていくのでしょうか。訴訟の結果によっては、アゴダはもちろんのこと、同様の利用規約を定めている他の事業者にも影響が及ぶ可能性があります。今後の動向に要注目です。
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