明治牛乳から抗菌性物質が検出、約45000本に回収命令-大阪府
2023/11/13   コンプライアンス, 危機管理, 行政対応, 食品衛生法, 食料品メーカー

はじめに


大阪府は11月10日、明治の関西工場で製造された「明治牛乳」から、化学的合成品たる抗菌性物質、スルファモノメトキシンが検出されたとして、株式会社明治に対し、回収命令を発したと発表しました。回収対象となる牛乳は44,577 本とされています。

 

回収命令の経緯


今回の回収命令に先立ち、大阪府は、大阪府食品衛生監視指導計画に定める年間検査計画に基づき、大阪府内に流通している牛乳の検査を実施していました。その結果、関西工場で製造された明治牛乳の一部について、抗菌性物質であるスルファモノメトキシンが0.02ppm検出されたということです。

厚生労働大臣が定めた「成分規格」によると、乳等は、“化学的合成品たる抗菌性物質”を含有してはならないとされています。
今回検出されたスルファモノメトキシンは、牛、馬、豚等の感染症の予防及び治療に使用される動物用医薬品の一つで、“化学的合成品たる抗菌性物質”に含まれます。そのため、この物質を有効成分とする注射剤を牛に使用する場合には、搾乳前72時間の使用は禁じられています。

スルファモノメトキシンの検出を受け、大阪府は、食品衛生法第13条第2項違反が認められたとして、株式会社明治に対し、食品衛生法第59条第1項に基づく回収命令を出しました。

回収対象は、西日本の2府23県の個人宅などへ宅配された商品で、瓶詰めの牛乳44,577本、賞味期限が今月13日のものとなっています。
なお、11日に行われた明治の発表によると、当該商品については、飲んだ場合にも健康上は問題ないとのことですが、回収・返金を行うため、手元に対象商品がある場合には、電話またはインターネットで連絡して欲しいとのことです。

 

食品のリコールについて


今回は大阪府による回収命令が出されていますが、近年、命令に基づかない自主回収、いわゆる「リコール」が増加しているといいます。SNSの発達により、風評が一気に広がるようになったことから、レピュテーションリスクを考慮し、企業側が先手を打つようになったためと言われています。

食品のリコールをめぐっては、食品衛生法および食品表示法の改正により、「食品等の自主回収報告制度」が2021年6月1日より施行されています。これは、事業者による食品などのリコール情報を行政が把握し、的確な監視指導や消費者への情報提供に繋げ、食品による健康被害の発生を防止することを目的として、事業者がリコールをする際の行政への届出を義務づけるものです。

食品衛生法では、(1)食品衛生法に違反する食品と(2)食品衛生法違反の恐れがある食品が、リコール報告の対象となっています。

ただし、対象から適用が除外されるケースもあります(共同命令第1条)。
一例として、地域のお祭りなどで販売された食品や、部外者が利用しない企業内の売店で販売された弁当、通信販売で会員のみに限定販売されている食品など、「当該食品が不特定かつ多数の者に対して販売されたものでなく」、なおかつ、アナウンスや個別連絡等で「容易に回収できることが明らかな場合」が挙げられます。

もっとも、届出対象でない場合でも、処理が不十分なフグ刺しなど、極めて毒性の強い食品の回収情報については、消費者に情報提供されることが望ましいため、事業者は任意の届出を行うよう呼び掛けられています。

 

リコールの着手後の手続き等


リコールに着手した場合、その届出先は都道府県知事となります。基本的には本社などの事務所を管轄する都道府県となりますが、自主回収を担当する品質管理部門が本社とは別の都道府県にある場合には、そちらの部門がある都道府県知事に対して届出を出すことも問題ないとされています。

リコールを行う企業は会社名、製造者や自主改修の理由、健康への影響などについての情報をシステムに入力し、届出を行います。その後、届出された自主回収情報は健康被害発生の可能性を考慮し、クラス分類がなされます。

届出された自主回収情報は健康被害発生の可能性を考慮し、クラス分類がなされ、随時公開されていきます。

自主回収報告制度(リコール)に関する情報」より画像引用

 

コメント


食品のリコールについては、今回の食品衛生法に基づく制度については厚生労働省が管轄ですが、食品表示法に基づく制度については消費者庁の「食品表示法の一部を改正する法律(平成30年法律第97号)」にて情報提供が行われています。

食品に限らず、一般的な「リコール」について日本の法律では明確な定義はありませんが、それぞれの分野ごとに、それぞれのリコール制度があります。

迅速な情報提供が求められるケースもある食品回収。有事の際に迅速に対応できるよう、届出や情報提供の流れについて、あらかじめ確認しておくことが重要です。

 

【関連リンク】
商品回収に関するお詫びとお知らせ(株式会社明治)
食品衛生法違反事例について(大阪府)

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