ジャニーズ事務所、性加害問題で被害補償および再発防止策を発表
2023/09/15   コンプライアンス, 危機管理, 法務相談一般, エンターテイメント

はじめに


その手腕で会社を大きく成長させた、ジャニーズ事務所の元社長、故・ジャニー喜多川氏。その訃報にあたっては、芸能界はもとより政財界からも、その功績を称える声が相次ぎました。しかし、未成年の男の子たちに性加害を行ったことが明らかとなった現在、会社は社長を交代させたほか、記者会見を開くなど対応に追われています。そのジャニーズ事務所が9月13日、被害者の救済についての被害補償および再発防止策を発表しました。

 

長年にわたる性加害が明らかに


4年前に亡くなった、ジャニー喜多川氏。しかし、今年3月に放送されたイギリスの国営放送・BBCが制作した番組を皮切りに、過去の性被害の実態が明らかになりました。報道などによりますと、ジャニー喜多川氏は、自身が設立した株式会社ジャニーズ事務所に所属していたタレントや研修生などに対して長年にわたり性加害を行っており、被害者の中には、中学生を含む未成年もいたとされています。

ジャニー喜多川氏の性加害については、かねてより公然の秘密として業界では有名だったといいます。1999年にジャニー喜多川氏の性加害に関する記事が週刊文春に掲載され、同記事をめぐる訴訟で東京高等裁判所が「ジャニー喜多川氏のセクハラ行為は、その重要な部分について真実である」旨を認定したにも関わらず、大手メディアなどは事務所への忖度からか、性被害に関する報道をほとんど行ってきませんでした。

しかし、BBCの放映した番組が世界的に大きな波紋を呼びました。7月24日には、国連人権理事会の“ビジネスと人権 作業部会”が日本で調査を行い、8月4日の会見で「事務所のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」と述べています。さらに、「事務所の特別チームによる調査は透明性と正当性に疑問が残り、被害者へのケアも不十分だ」と指摘しました。

 

事務所が公表した補償と再発防止策


国内メディアでも大きく取り上げられるようになったことで、事務所は9月7日に記者会見を開きました。そこで、「ジャニー喜多川により、長期間にわたる性加害があった」旨の認識を示し、陳謝しました。そして、13日、ホームページ上で被害補償と再発防止策を公表しました。

<<被害補償>>
「被害者救済委員会」を設置。委員会に対しては、申告内容や資料の検討、被害の申告者からの直接ヒアリング、補償金額の判断などを一任するとしています。委員会はいずれも元裁判官の弁護士3名(過去に事務所が助言などを依頼したことのない弁護士)で構成されるということです。

対象となるのは、過去にタレントもしくはジャニーズJr.などの研修生として所属し又は現在所属していて、性加害の被害を受けた人。これ以外でも被害を受けたとの申告がある場合には個別に対応を検討するとしています。

 

<<再発防止策>>
・チーフコンプライアンスオフィサー(CCO)の策定と設置及び社内の諸制度の整備・拡充・実施
・社員、タレントに対して性加害、ハラスメントなどの研修の実施・充実
・経営責任の明確化や、同族経営の弊害を排する体制の構築に向けガバナンスの強化 
・メディアなどの関係者と対話、意見を経営に反映へ

 

社内で性被害が確認されたら


社長が社内の人間などを対象に性被害を拡大させた今回の事件。仮に、社内で性的被害が確認された場合、どういった点に注意するべきなのでしょうか。

就業規則や相談体制を整えることはもとより、被害者・加害者とされる人物のプライバシーを守ることも重要になります。相談の段階では、加害者とされる人物はまだ加害者として確定したわけではありません。また、相談内容が周囲に漏れ伝わることで被害者が嫌がらせにあったり、心的なストレスを受けるおそれがあります。

・相談を理由に相談者に不利益が被らない対策を相談担当者に取らせる
・相談者や加害者のプライバシーを保護するために必要な指導や研修の実施
・相談対応マニュアルの作成

などが求められます。

また、相談後は、速やかな事実確認と必要に応じて被害者と加害者を隔離する必要があります。北海道航空自衛隊性暴力事件(札幌地裁平成22年7月29日)の裁判では、被害の深刻さに応じて、以下の義務を負うと判示されています。

(1)被害職員が心身の被害を回復できるよう配慮すべき義務 
(2)加害行為によって当該職員の勤務環境が不快なものとなっている状態を改善する義務
(3)性的被害を訴える者が職場の厄介者として疎んじられ,様々な不利益を受けることがないよう、不利益の発生を防止すべき義務

隔離方法については、事業所や店舗の変更、被害者・加害者を一時的に出勤免除しての自宅待機、リモートワークへの切り替えなどを検討することも視野に入れる必要があります。

 

コメント


BBCの番組が実態を報じてから、およそ半年。事務所所属のタレントを広告起用している企業は、今後の起用を見合わせるなど対応に追われています。

こうした企業の動きに対して、被害を訴える当事者の会は「取引を直ちに停止することを希望しない」として、スポンサー企業に対して再発防止や救済に向けて働きかけて欲しいとする要請書を公表しています。しかし、国連が調査に乗り出すほどの重大な事態を引き起こした企業との取引は、国内外の取引先・消費者等からの信頼を低下させるリスクがあり、スポンサー企業は慎重な対応を迫られています。

被害者に深刻な精神的損害を残した今回の性加害問題。スポンサー企業の対応にも注目が集まりますが、まずは何よりも、事務所による一刻も早い補償と徹底した再発防止が求められます。

 

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