同じマーケティング会社が関与か、「NO.1」広告のリスク
2023/08/08   広告法務, 景品表示法

はじめに

 「満足度NO1」などの広告表示で景表法違反に問われた複数の事例で表示の根拠となる調査結果が同じ会社から提供されていたことがわかりました。商品を利用したことがない人の回答も集計していたとのことです。今回は「NO1」表示のリスクを見直していきます。

 

事案の概要

 共同通信の報道によりますと、合理的な根拠がないのに「満足度NO1」などの広告表示をしたとして消費者庁から景表法違反で措置命令を受けていた東京の家庭教師会社と福岡の健康食品会社が同じマーケティング会社から提供された調査結果を使用していたとされます。マーケティング調査を行っていたのは「NEXER」(豊島区)で「日本トレンドリサーチ」の名称で調査結果を公表しているとのことです。消費者庁の調査では、同社は実際に該当商品を利用したことがない人の回答も集計に入れており客観的な調査ではなかったと認定しております。市場調査業者がつくる「日本マーケティング・リサーチ協会」は「NO1」表示に関する根拠と調査についての提言を行っております。

 

「NO1」表示と景表法

 商品の広告で「売上NO1」や「顧客満足度NO1」といった表示は一般消費者の商品選択に際しての重要な判断指針となり非常に強い顧客誘引力があるものと言えます。しかしそれ故に、その表示に合理的な根拠がなかった場合、消費者の適正な商品選択を阻害するおそれが強いとされております。景表法では実際のものよりも著しく優良または有利であると誤認させる表示は優良誤認表示または有利誤認表示などの不当表示として禁止しており、合理的根拠のない「NO1」表示もこれらに該当するとされております。公取委の調査でも、近年このような「第1位」「トップ」「日本一」などといった「NO1」表示が非常に増えており、多くの場合で具体的な根拠が記載されていないまたは根拠がわかりにくいと指摘されているとされております。

 

「NO1」表示に関する景表法上の考え方

 公取委が公表しているガイドラインによりますと、広告等の表示物から一般消費者が認識する商品等の範囲と「NO1」表示の根拠となる調査対象となった商品等の範囲との間に乖離がある場合に景表法上問題となるとされております。たとえば「美容液○○年売上実績NO1」と表示されていても、実際には中高年向け美容液での売上実績がNO1であった場合などとされます。追加的に「○○成分配合美容液売上実績NO1」と表示されていても一般消費者が商品範囲を理解できないときは結局美容液と称する商品全体での売上NO1と認識するおそれがあるとしております。一般消費者にはNO1表示の対象となる商品等の範囲また調査対象となった地域を都道府県、市町村等の行政区画に基づいて明瞭に表示することが望ましいとのことです。

 

適正なNO1表示のための要件

 NO1表示が不当表示とならないためには、その表示の内容が客観的な調査に基づいていること、調査結果を正確かつ適正に引用していることの両方を満たす必要があるとされます。客観的な調査とは、学術界または産業界において一般的に認められた方法または関連分野の専門家多数が認める方法によって実施されたもの、または社会通念上および経験則上妥当と認められる方法による必要があるとされております。たとえば顧客満足度調査で調査対象が自社の社員や関係者である場合、調査対象者が統計的に客観性が十分確保されるほど多くない場合、自社に有利になるような調査項目を設定しているなどといった場合は客観的な調査とは言えません。そして調査が適切でも、その内容と表示に乖離がある場合や、商品範囲、地理的範囲、調査期間などの表示が小さすぎたり、同一視野内に表示されていない場合もやはり問題となるとされます。

 

コメント

 公取委の調査では、NO1表示が多かった業種は食品・健康食品、家電、化粧品、新聞・出版物の順となっております。サービス分野では学習塾、住宅関連リフォーム、住宅建築、携帯電話、パチンコホール、車検の順です。そして表示内容については全体の4割強が売上についてのNO1表示とされます。同一商品・サービス分野でNO1をうたう商品・サービスが同時に多数存在することも考えられます。しかし消費者モニター調査では8割強の消費者がNO1表示を参考にするとしております。商品選択の考慮要素として非常に重要であるにも関わらず、客観的で適切な根拠が示されない場合が多く問題視されております。また問題のある調査やモニタリングを事業者が行っていた場合、景表法上違法となるのはあくまで表示した事業者であって調査をした事業者は現状対象となっておりません。第三者にモニタリングを依頼する場合や、それに基づき「NO1」表示をする場合は本当に適切に調査がなされているか、また適切に表示されているかを慎重に確かめることが重要と言えるでしょう。

 

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