まもなく導入で公取委も注意喚起、インボイス制度について
2023/07/04   税務法務, 独禁法対応, 独占禁止法, 租税法

はじめに

 インボイス制度がまもなく導入されるにあたって、取引先の見直しや、消費税相当額の値下げを取引相手に求める事例が確認されております。制度の理解不足が背景にあるとのことです。今回はインボイス制度の概要を見ていきます。

 

事案の概要

 今年10月1日からインボイス(適格請求書)制度の導入が予定されております。それにともない消費税の控除ができなくなるとの懸念から取引相手の見直しを検討している企業が増加しているとされております。また公取委の発表では、取引相手に消費税相当額の値下げを一方的に通告した例も確認されており、独禁法違反の恐れもあるとのことです。10月1日から事業者が消費税を納付する際、原材料購入などに支払った消費税分を控除するためにはインボイスが必要となることから、インボイスの発行が不要とされる免税事業者などとの取引に不安が広がっております。以下インボイス制度の概要を簡単に見ていきます。

 

消費税とインボイス

 製造業者や生産者から卸売業者が製品を仕入れた際に消費税を製造業者等に支払います。その卸売業者から製品を仕入れた小売業者も卸売業者に消費税を支払います。そしてその小売業者から製品を購入した消費者も小売業者に消費税を支払います。消費税を受け取ったそれぞれの業者はその消費税を国に納付することとなりますが、その際自らが仕入れの際に支払った分は控除され、最終的に100%消費者が負担する形となります。これが消費税の仕組みです。今年10月1日から、この自己が支払った消費税分である仕入税額を控除するには原則としてインボイス(適格請求書)が必要となります。そしてこのインボイスを交付することができるのは登録を受けた適格請求書発行事業者に限られることとなります。

 

インボイスと適格請求書発行事業者

 インボイス(適格請求書)とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」とされ、登録番号や適用税率、消費税額が記載された請求書や納品書その他これらに類するものを言うとされております。領収書やレシートなども含まれます。そしてこのインボイスを発行することができるのは税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限定されております。適格請求書の記載事項は、(1)発行事業者の氏名または名称と登録番号、(2)取引年月日、(3)取引内容、(4)税率ごとに区分して合計した対価の額と適用税率、(5)税率ごとに区分した消費税額等、(6)書類の交付を受ける事業者の氏名または名称となっております。なお小売業者やタクシー業者、飲食店などは記載項目が簡易的になった適格簡易請求書(簡易インボイス)を交付することが可能です。

 

適格請求書発行事業者登録

 インボイスを発行するためには上記のように税務署に適格請求書発行事業者の登録を行うことが必要です。適格請求書発行事業者として登録できるのは消費税の課税事業者に限られております。これには法人、個人事業主、フリーランスなどは問いません。個人事業主で課税売上高が1000万円以下の場合は免税事業者となるため適格請求書発行事業者として登録することはできません。ただしこの消費税法上納税義務が免除されている免税事業者も自らの意思で課税事業者となることができ、税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出することによって課税事業者となることが可能です。これにより適格請求書発行事業者登録もできるようになります。適格請求書発行事業者の登録申請書を税務署に提出し、審査を受けると登録通知書が発行され登録が完了します。

 

コメント

 以上のように今年10月1日からインボイス制度が導入され、消費税納付の際の自社が支払った分の控除には原則としてインボイスが必要となります。そのためインボイスを発行できない免税事業者との取引を見直したり、消費税分の値引きを要求するといった事態が懸念されております。このインボイス制度は消費税分を受け取っていながら国への納付が免除されている免税事業者の、いわゆる「益税」を回収することを目的としているとされます。そのため上記のように免税事業者も自らの意思で課税事業者となることが可能となっております。またこのインボイス制度は経過措置として10月からの導入から3年間は免税事業者等からの課税仕入れにつき80%控除することが可能となっており、その後3年間は50%控除可能となる経過措置が設けられております。免税事業者との取引がある場合には、これらの制度を正確に把握した上で今後の取引について慎重に話し合うことが重要と言えるでしょう。

 

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