6月1日から施行、改正消費者契約法について
2023/06/05   コンプライアンス, 消費者契約法

はじめに

 新たな悪質商法に対応するため、契約の取消事由の追加などが盛り込まれた改正消費者契約法が6月1日に施行されました。退去困難な場所での勧誘などが追加されます。今回は改正消費者契約法の概要を見ていきます。

 

改正の経緯

 近年の超高齢社会の進展に伴い、高齢者である消費者の保護がより重要な課題となっておりました。そこで平成28年と30年改正で消費者契約の取消範囲が拡張されました。しかしその一方で若年者である消費者が巻き込まれる消費者被害の多様化も指摘されるようになりました。また民法改正による成年年齢引き下げがなされ、若年成人の消費者被害の予防や救済が喫緊の課題となっているとされます。コロナ禍によるオンライン取引の急増による消費者契約を取り巻く環境の変化もあり、これらに対応した法制度の整備の要請から2022年改正に至ったとされます。以下具体的に令和4年改正について概観していきます。

 

取消事由の追加

 消費者契約法では事業者による不当な勧誘行為として「誤認類型」と「困惑類型」が規定されております。誤認類型とは、重要な事項について事実と異なる説明(不実告知)や不確かなことを確実であると説明する(断定的判断の提供)、不利な情報を伝えない(不利益事実の不告知)などが挙げられます(4条1項各号)。そして困惑類型については当初(1)不退去と(2)退去妨害のみが規定されておりました。その後2018年改正によって、(3)経験不足を利用した不安を煽る告知、(4)恋愛感情に乗じた人間関係の濫用、(5)加齢等による判断力低下の利用、(6)霊感等による知見を用いた告知、(7)契約締結前に債務の内容実施、(8)不利益事実の不告知による取消要件緩和、が追加されております。そして今回の改正法によって(9)退去困難な場所へ同行させての勧誘、(10)威迫による相談妨害、(11)承諾前の契約目的物の現状変更が追加されております。

 

具体的内容

(1)退去困難な場所に同行しての勧誘

 消費者契約法4条3項2号の「退去することが困難な場所」とは、遠方まで連れて行かれ、帰りの交通手段が無いなど、消費者が任意に退去することが困難な場所とされます。任意の退去が困難と言えるかについては諸般の事情から客観的に判断されるとされます。消費者が自発的に同行した場合は退去困難な場所であっても該当しないとされます。

(2)威迫による相談妨害

 4条3項4号の威迫による相談妨害とは、気勢を示し不安を生じさせるなど、相手方の恐怖心を煽る行為により、消費者の親族や友人、知人などに相談することを妨害することを言います。消費者が親に相談したい旨などの意思を示した際に、自分の意思で決めることを強要したり、他の人はみな自分で決めているなどと申し向ける行為も該当すると考えられております。

(3)契約締結前の現状変更

 4条3項9号では、消費者が契約締結の承諾の意思表示をする前に、契約を締結したなら事業者が負うこととなる債務の内容の全部または一部を実施したり、また契約目的物の現状を変更して、現状回復を著しく困難にすることが規定されております。契約を締結する前に、自宅の物干し台に合わせて「竿竹」を切断し、断れなくなったといった事例が典型例と言えます。契約の債務内容ではない追加的なサービスの履行も含まれるとされます。

 

その他の改正点

 上記以外にも解約料の説明努力義務や免責の範囲の不明確な条項の無効、その他事業者の努力義務が拡充されております。まず契約解除に伴う賠償額や違約金を予め定める場合、その算定の根拠の概要を説明するよう務めなければならないとしております(9条2項)。なおこの金額が「平均的な損害」を超える場合は無効となります(同1項1号)。次に事業者側の不法行為等による損害賠償について、故意または重過失による場合の除外していない免責条項など範囲が不明確な免責条項が無効とされます。「法令に反しない限り、1万円を上限として賠償します」といった条項です。「軽過失の場合は、1万円を上限とします。」といった条項は有効とされます。また解除権行使に関する情報提供や消費者の知識・経験、年齢など考慮要素が努力義務として追加されております。

 

コメント

 以上のように昨年成立した改正消費者契約法が今月1日から施行となりました。これにより退去困難な場所に連れて行っての勧誘や相談妨害、契約前の現状変更が新たに取消事由として追加されます。またこれまでも多くの契約書に盛り込まれていた「法令条許容する限り免責されます」といった、事業者の故意または重過失の場合も免責される条項も無効となります。このような免責条項は適格消費者団体による差止請求の対象ともなることから、放置した場合は提訴されることも考えられます。これらの点を踏まえて、今一度自社の契約書や勧誘方法を見直しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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