イオンが定款の基本理念を大幅改訂、定款記載事項について
2023/05/12 商事法務, 会社法

はじめに
流通大手「イオン」が今年の株主総会で定款2条の基本理念を大幅に改訂する予定であることがわかりました。改訂後は2000文字超になるとのことです。今回は株式会社の定款について見直していきます。
事案の概要
イオンの発表などによりますと、現行の定款2条では理念の原点を「お客さま」とし、「平和」を追求し、「人間」を尊重し、「地域」に貢献することを堅持して実践と継続的な企業価値の向上を実現するとしております。今年5月26日開催予定の第98期定時株主総会でこの定款2条を大幅に改訂し、「平和」「人間」「地域」についてより詳細に記述した定款変更案が提示されております。そこには平和の意味やイオンが平和に反することを行わないこと、岡田名誉会長の小売業に対する理念、地域社会への能動的な貢献などが2000字以上のボリュームで記述されております。また11条の株主総会の招集についても開催場所を定めない総会が可能となる旨が追加されております。災害や感染症拡大などを念頭に総会のデジタル化を可能とするものです。
株式会社の定款とは
定款とは、会社設立時に発起人全員の同意で定める会社の根本規則を言います。会社の憲法とも呼ばれており、会社の目的や称号、事業内容などその会社の様々な基本事項を定めることが法律で義務付けられております。会社設立の際にはその内容に問題が無いかを公証人役場で認証してもらうことが必要で、その原本は会社と公証人役場でそれぞれ1部ずつ保管されることとなります。会社は定款を本店に備え置き、株主や会社債権者が閲覧・謄写できるようにしておく必要があります(会社法30条)。また行政機関等に定款の提出が求められる場合は、定款の写しに原本と相違ないことの証明を付けることとなります。
定款の絶対的記載事項
定款には必ず記載しなければならず、記載がない場合は定款自体が無効となる「絶対的記載事項」、法的には必ずしも記載する必要はなく定款の有効性に影響を及ぼさないが記載しなければ効力を有さない「相対的記載事項」、その他公序良俗等に反しない限り自由に記載することができる「任意的記載事項」があります。絶対的記載事項には(1)商号、(2)目的、(3)本店所在地、(4)設立の際に出資される財産の価額又はその最低額、(5)発起人の住所及び氏名、(6)発行可能株式総数が挙げられます(27条)。その会社の最低限の基本情報と言えます。これらのうちどれか1つでも記載が欠けていた場合は定款自体が無効となってしまいます。
その他の記載事項
相対的記載事項としては、変態設立事項(28条)、株主名簿管理人(123条)、譲渡制限株式の指定買取人に関する事項(140条5項)、相続人等に対する株式の売り渡し請求(174条)、単元株式数(188条1項)、株券発行(214条)、株主総会や取締役会の招集通知期間に関する事項(299条1項、368条2項)、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人等の設置(326条2項)、役員等の責任免除(426条)、責任限定契約(427条)、中間配当(454条5項)などが挙げられます。いずれも定めた場合は定款に記載しないと効力が発生しません。そしてこれら絶対的記載事項・相対的記載事項以外にも公序良俗や会社の目的等に反しない限りあらゆる事項を任意的記載事項として記載できます。株主総会の開催に関する事項や役員報酬、配当などの事項が挙げられます。
コメント
今回のイオンが予定している定款変更は2条の会社理念と11条の株主総会の招集に関する事項となっております。いずれも任意的記載事項となっており、会社の本質や公序良俗に反しないかぎり原則自由に記載することが可能です。本件では現行の約260字程度の内容から2000字を超えるボリュームに大改訂を発表したことから話題となっており注目を集めております。従来から理念が正確に伝わりにくかったとし、数年をかけて改訂作業を進め、今年の入社式で初披露したとのことです。会社の憲法とも呼ばれる定款に、どのようなことを記載しなければならないのか、またどのようなことを任意に記載することができるのかを把握し、今一度自社の定款を見直しておくことも重要と言えるでしょう。
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