原発事故の補償を水俣病被害者補償から考える
2011/04/03   訴訟対応, 民事訴訟法, その他

原発事故補償を水俣病被害者補償から考える

放射能漏れの被害が拡大したことにより、現在、福島県や茨城県、栃木県、群馬県には、国からの指示でホウレンソウや牛乳に出荷制限がかかっている。これに伴う、風評被害も拡大の一途をたどっており、これらの損害額は、1兆円を超えるとも言われている。はたして、東京電力は、これらの損害を補償できるのか!?
この問題を考えるときに、水俣病被害者の補償に四苦八苦しているチッソ株式会社がヒントとなるようだ。

水俣病補償問題

株式会社チッソが、水銀が含まれた廃液を海に垂れ流したことにより、引き起こされた水銀中毒が、いわゆる水俣病と呼ばれている。被害者は総計1万数千人いると言われ、その被害額は5000億円以上とも言われている。
チッソ株式会社は、液晶製造などの事業を行ってきたが、上記損害額の補償のために、これらの事業を新たに作った子会社JNCに譲り、分社化を行った。

※チッソ株式会社分社化についての概説※
上述の通り、チッソ株式会社は、水俣病損失のために莫大な借金を背負っており、国や自治体等からの支援によって、ようやく経営が維持されている状態だったが、その一方で、液晶製造などの事業自体は順調に利益をあげていた。
そのため、水俣病被害の補償の責任から離れて、順調な液晶製造などの事業のみを行う新しい会社(JNC)を作れば、その新会社(JNC)に対する信用やイメージは格段にアップし、より一層、液晶製造などの事業の活性化が期待できると考え、チッソ株式会社は、「患者補償や公的債務返済部門を担う親会社(チッソ株式会社)」と「液晶製造などの事業を担う子会社(JNC)」とに分社化した。(従業員3100人中、3000人がJNCに移った)

チッソ株式会社としては、新会社JNCを大きく育てて、将来的に上場させ、親会社として現在保有しているJNC株を高値で売却し、その代金を水俣病補償に充てるつもりらしい。
一方で、JNC株を売却した後は、資産を失ったチッソ株式会社は清算される予定であり、これにより、水俣病補償の責任を負う会社は消滅することになる。水俣病の被害者は、いまだに続々と顕在化して来ている状況であり、チッソ消滅後は、これらの被害者の補償は宙ぶらりんとなるおそれがあることから、今回の分社化は、チッソ株式会社の責任逃れにつながるとも言われている。

雑感

現在、原発事故の被害者の補償に向けて、政府は原子力損害賠償法を適用する検討に入っている。この法律では大規模な天変地異やテロなどの社会的動乱の際に、国が原子力事業者(今回で言う「東京電力」)に課せられた補償の一部または全部を肩代わりする例外措置を設けているが、税金を使って東京電力の尻拭いをするのかと、批判の声も多い。
一方で、国は、水俣病補償の際には、『汚染者負担の原則』を主張して、補償の肩代わりを頑なに拒否して来た。チッソは、戦後の高度成長を化学品生産で支えた企業であり、そのため、水銀の海への排出を国も半ば黙認してきた経過があるのだが、それにも関わらず、国がチッソだけに責任を負わせるのは、責任の押しつけに感じる。
その意味で、私は、原子力政策を推し進めて来た国が、今回の原発被害の補償を肩代わりするのは当然であると考える。

東京電力と国とどちらにどれだけの責任があるのか?責任の所在を明らかにすることは、次なる被害の発生を防止する上で、とても大切なことではあるのだが、まずは、被害者の救済が第一である。
まずは、今もリアルタイムで進行している原発被害を最小限にとどめ、すでに発生してしまった被害については、その規模を正当に評価して、東京電力と国とで協力して、完全な救済を与える。水俣病補償問題を教訓に、国には、被害者の救済を第一に考えた補償の枠組みを構築してもらいたい。

上間法務行政書士事務所 行政書士 齊藤 源久(さいとう もとひさ)

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