コロナ関連倒産が激増/取引先が倒産した際の法務対応
2023/02/08 債権回収・与信管理, 倒産法
はじめに
東京商工リサーチの発表によると、2022年1月から12月の全国企業倒産件数(負債総額1,000万円以上)は6,428件と前年比6.6%増となり、3年ぶりに前年を上回りました。そのうち、新型コロナウイルスが感染拡大したことを理由に経営破綻した「新型コロナウイルス関連倒産」は2290件と前年比で36.7%増となっています。ウクライナ危機を契機とした燃料費の高騰や円安による仕入れ原価の増加が背景にあると言われています。さらに追い打ちをかけるように、コロナ特例貸付制度により借り入れの返済も始まる中、窮地に追い込まれていく企業がさらに増えていくことが予想されています。
新型コロナウイルス関連倒産
2月7日に行われた帝国データバンクの発表によると、新型コロナウイルス関連倒産は2020年から累計して5101件(負債1000万円未満および個人事業者を含む)。利息も含めたコロナ融資の元本返済がスタートする3月を目前に、さらに加速すると予想されています。
もともと、コロナ禍で経営が苦しい事業者への支援策の1つとして始まった「ゼロゼロ融資」と呼ばれる政策。政府が利子を負担することで実質無利子・無担保で融資を受けることができたため、資金繰りに困る事業者の命綱となっていました。
具体的には、日本政策金融公庫が実施する「新型コロナウイルス感染症特別貸付」と、さらに「特別利子補給制度」を併用することで無担保・無利子・3年間返済なしの融資を受けることができましたが(新規申し込みは、2022年9月30日で終了)、3年間の返済猶予期間が終了し、返済を始める企業が増えると見込まれています。
ゼロゼロ融資を受けた事業者の倒産による融資損失総額(焦げ付き)は、既に350億円を超えているとも言われており、苦境に陥る事業者の事業再構築のための、官民双方による追加の支援が求められています。
取引先が倒産しそうになったら
それでは、突然、取引先企業から「倒産する」旨の連絡があった場合、どのように対応すればよいのでしょうか。特に、取引依存度の高い取引先の場合、自社の事業経営に大きな支障が出ることが予想されます。
各企業の置かれた状況や取引先との関係性により一部異なるところはありますが、法務としては以下のポイントを踏まえた対応が求められます。
(1)現場への商品回収指示
取引先が自社商品の買手であった場合、法務の初動対応として、現場に対し、代金未払いとなっている商品の回収を指示することが重要です。
その際、売買契約を読み返し、所有権の移転時期がどのように取り決められているかの確認が必要になります。
契約上、代金支払いまでの所有権留保が定められている場合には、契約に基づく商品の回収、所有権留保に関する特約がない場合には、債務不履行に基づく契約解除を行い、商品の返還を求める形になります。
(2)商品納入停止に向けての交渉指示
倒産のおそれがあるということは、当然ながら代金未払いのリスクが高まっているということです。自社に納入義務があり、いまだ納品がされていない商品がある場合には、取引先と交渉し、納品の停止に同意してもらう方がよいでしょう。
(3)売掛金と買掛金の相殺
取引先に対し、自社が売掛金を有する場合、取引先に対する買掛金債務を対等額で相殺することも有効です。売掛金と買掛金の額、取引先の倒産可能性を考慮したうえで、相殺実行の有無を検討するとよいでしょう。なお、相殺による債権回収は、お金や商品の移動を伴わない分、後日の紛争に繋がりやすいという特徴があります。相殺の事実を証拠として残すため、取引先に対し、内容証明郵便で「相殺通知書」を送付するのがお薦めです。
(4)担保権の実行
自社が取引先に対し担保を有している場合、担保権を実行するのも有効です。もっとも、担保権の実行は、取引先との関係性に少なくない影響を与えるおそれがあるため、今後の取引継続可能性を慎重に見極めながら、実行の有無を検討すべきでしょう。
(5)裁判所への債権届出書の提出
取引先の倒産が現実のものとなり、取引先が法的整理(破産、民事再生等)を行った場合には、債権届出書を提出しなければなりません。債権届出書は、裁判所から届く書面で、提出期限があります。いち早く開封し、自社の債権額(利息・遅延損害金含む)を漏れなく確認したうえで、必要事項を記入し期限までに提出しましょう。
コメント
今回は新型コロナウイルス関連倒産を主に取り上げましたが、それ以外でも、今後、電気・ガス代の高騰や人手不足など様々な要因で倒産に至る企業が増える可能性があります。
取引先の倒産危機の際は、とにもかくにも、初動における情報収集が肝となります。そのために、取引先担当者との密なコミュニケーションや取引先の視察なども必要になって来ます。
法務と現場がどのように連携し、情報収集や各種手続きにあたるのか、平時から整理しすり合わせておくことが重要です。
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