消費者庁で有識者検討会、霊感商法について
2022/08/26 コンプライアンス, 消費者契約法

はじめに
河野太郎消費者相は26日、霊感商法対策を話し合う消費者庁の有識者検討会の初会合を29日に開く旨発表しました。これまで霊感商法の被害者救済に取り組んできた弁護士等が参加するとのことです。今回は今社会問題化している霊感商法について見ていきます。
事案の概要
先日の安倍元首相の暗殺事件以降、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と現職政治家との関係が世間で注目を浴びております。またそれにともない旧統一教会がこれまでに行ってきたとされる霊感商法等への被害救済についても関心が高まっております。それを受け河野太郎消費者相は26日、閣議後の会見で霊感商法や開運商法全般への対策を議論する消費者庁の有識者検討会の初会合を29日に開くとしました。被害の未然防止、被害の救済、事業者への対応等について最近の動向を踏まえて議論していくとのことです。政府はこの検討会とは別に、法務省や警視庁、消費者庁などが参加する関係省庁連絡会議も設置しており、検討会の議論内容も会議に報告される予定とのことです。
霊感商法とは
霊感商法とは、霊感があるかのように振る舞い、先祖の因縁や祟があるなど相手の不安を煽って数珠や壺、経典や印鑑、水晶などを法外な値段で売るといった商法を言います。またこの商品を買えば幸運を招くなどと謳い商品を売りつける、いわゆる開運商法も同様の悪徳商法の一種と言われております。これらの商法は1980年代に旧統一教会の信者らによって広く行われ、国会でも社会問題として取り上げられた経緯があります。これ以降全国の被害者による損害賠償訴訟が相次ぎ、信者らの不法行為に対する教会の使用者責任が認められる判決が出されるにいたり、2018年6月には消費者契約法改正で霊感商法に関する規定が盛り込まれました。以下具体的に見ていきます。
霊感商法に関する裁判例
霊感商法に関する著名な裁判例として福岡地裁平成6年5月27日の判決があります。この事例では、四女が生まれつき目に障害があるのは武士であった先祖が目の見えない町人を斬ったことが因縁となっているなどとして多宝塔を600万円で購入させるなど法外な値段で商品を購入させたというものです。福岡地裁は、宗教活動を口実に専ら利益獲得を目的として相手の不安を煽り、困惑を引き起こすような態様で分不相応な多額の金員を支出させるなど、社会通念を著しく逸脱する行為は違法としました。またこれら信者の活動は旧統一教会が把握しており、違法な行為がなされないよう指揮・監督できる立場にあり、また外観上宗教活動の一環そしてなされたことも明白であるとして教会の使用者責任も認めました。
消費者契約法による規制
2018年に改正された消費者契約法によりますと、「消費者に対し、霊感その他の合理的に実証することが困難な特別な能力による知見として、そのままでは当該消費者に重大な不利益を与える事態が生ずる旨を示してその不安をあおり、当該消費者契約を締結することにより確実にその重大な不利益を回避することができる旨を告げること」と霊感商法を定義しております(4条3項6号)。勧誘の際に、これに該当する行為を行い消費者を困惑させて契約をした場合は、消費者は当該契約を取り消すことができるとされております。霊感商法でもクーリングオフができる場合がありますが、これは契約書面を受け取った日から8日以内に手続きをする必要があります。これに対して消費者契約法による取り消しは特に期間制限は設けられておりません。
コメント
先の安倍元首相暗殺事件を機に宗教団体等による霊感商法や開運商法といった、消費者被害の問題が再燃しております。上でも述べたように宗教活動や慈善活動を名目としていても、相手方の不安を煽り、分不相応な金員を支払わせるといった行為は社会通念を逸脱し違法であるとされております。数年前の消費者契約法改正でもこのような行為による契約は取り消すことができる旨明文化されました。また強引な霊感商法に対して恐喝罪が適用されるなど、刑事事件で有罪判決が出た事例も存在します(青森地裁昭和59年1月12日)。今後もこのような商法に対しては法改正などを通じて規制が厳しくなっていくものと予想されます。取引先が問題となりうる商法を行っていないか、また問題視されている団体等と関わりを持っていないかを今一度見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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