消費者団体が化粧品販売会社を提訴、定期購入商法規制について
2022/07/13   広告法務, 消費者契約法, 特定商取引法

はじめに

 定期購入契約であるにもかかわらず「お試し」を装った広告で消費者を誤認させているとして、適格消費者団体が化粧品販売会社「CRAVE ARKS」(東京都)を提訴していたことがわかりました。同社へは既に改善を求めたが改善はなされなかったとのことです。今回は特定商取引法での規制が強化された定期購入契約について見直していきます。

 

事案の概要

 京都新聞の報道によりますと、同社では販売する化粧品のウェブ広告で「初回特別価格約79%OFF」「1980円」などと表示しているものの、実際には1ヶ月分だけを購入することはできず、そのまま自動的に定期購入契約になっているとされます。初回購入から30日後に2回目の商品が送付され、その後60日ごとに商品が届き、2回目以降を受け取らずに解約する場合は通常価格との差額約8000円の支払いが求められるとのことです。「京都消費者契約ネットワーク」は同社のこのような表示が消費者に誤認を招くとして広告の差止を求め京都地裁に提訴しました。

 

定期購入契約規制

 定期購入契約とは、一度の契約でその後定期的に商品が送られてくる契約を言います。いわゆるサブスクリプション契約とも呼ばれ、健康食品や化粧品などが毎月送られてくるような契約が典型例と言えます。近年このような定期購入契約を巡り、詐欺的な表示の横行が問題化しております。「初回無料」「今だけ初回分が90%OFF」「いつでも解約可能」などと表示され、お試しで無料または格安で1度だけ購入できるように思わせつつ、実際には自動的に定期購入となっていたり、高額の解約料を取る旨が小さな文字で記載されているといった例が多発しております。これを受け昨年の特定商取引法改正でこのような定期購入契約の規制が強化されました。以前にも取り上げましたが、今年6月1日から施行されております。

 

特定商取引法による規制

 改正特定商取引法12条の6第1項によりますと、定期購入契約にかかる通信販売の場合、次の事項の表示が義務付けられます。(1)分量、(2)代金とその支払時期および方法、(3)商品・役務の引き渡し時期または移転時期、(4)申込み期間の定めがある場合はその旨と内容、(5)申込みの撤回または解除に関する事項となっております。これらの事項を最終確認画面に明示する必要があります。そして「人を誤認させるような表示」をすることが禁止されます。つまり定期購入契約ではないと誤認させるような表示や、定期購入契約に条件が付されているにもかかわらずそれを明示しないような表示が禁止されるということです。これらに違反した表示がなされた場合、適格消費者団体は差止請求をすることができます(58条の19第3号ロ)。また罰則として100万円以下の罰金が規定されております(72条1項4号)。

 

人を誤認させるような表示

 消費者庁のガイドラインによりますと、「人を誤認させるような表示」に該当するかは、その表示事項の表示それ自体、記載されている表示の位置、形式、大きさ、色調等を総合的に考慮して判断されるとしております。たとえば最初に引き渡す商品等の分量や価格を強調して表示し、契約に関する条件等をそれに比べて小さな文字で表示したり、離れた位置に表示する場合は該当する可能性が高いとされます。特に「お試し」や「トライアル」といった文字をことさら強調する表示は一般的な契約とは異なる試行的な契約であると消費者が認識する可能性が高いとしております。また「いつでも解約可能」などと強調する表示は消費者が文字通り任意にいつでも無条件で解約できると認識するため、実際には条件が付されている場合は違法となる可能性が高いとされます。

 

コメント

 本件で「CRAVE ARKS」のウェブ広告では、「初回特別価格約79%OFF」「1980円」と表示されているにもかかわらず、実際には定期購入契約となっており解約する場合は通常価格との差額の支払いが必要とされます。一般消費者から見ると、これらの表示は最初1回だけ1980円で試すことができると考えるものと思われ、これをもって定期購入契約が締結されるとは考えないものと思われます。そのため特商法に違反する表示と判断される可能性は高いものと考えられます。以上のように昨年の法改正によって欺罔的な定期購入契約の広告については規制が強化され、行政処分を挟まずに直接罰則が規定されることとなりました。また適格消費者団体による差止の対象にも追加されております。定期購入に関する広告を出している場合は、消費者庁のガイドラインを参考に、違法な表示となっていないかを今一度確認しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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