厚労省、大企業における男女の賃金差異の情報公表義務化をお知らせ
2022/07/14 労務法務, 労働法全般

はじめに
厚生労働省は2022年7月8日、女性活躍推進法の改正省令の施行に伴い、大企業における男女の賃金差異の情報公表が義務化されたことをホームページ上で発表しました。今回の改正で、女性の活躍に関する情報公表項目として「男女の賃金の差異」が追加されることになり、常用労働者301人以上の大企業に対して情報公表が義務化されることになります。そこで本記事では、今回の義務化に関する詳しい内容を見ていきましょう。
「男女の賃金の差異」公表義務化の経緯
女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、女性が職業生活の希望に応じて能力を十分に発揮して活躍できる環境を整備することを目的として2016年に成立した法律です。従来は301人以上の従業員がいる企業に対して、①自社に所属する女性の活躍に関する状況把握・課題分析の実施、②数値目標と行動計画の策定や周知、公表、③本制度に関する都道府県労働局への届け出、④自社に所属する女性の活躍に関する情報公開、の4つが義務付けられていましたが、2022年4月1日からは、これらの義務が101人以上の企業にまで拡大されていました。
そして、今回、2022年7月8日、厚生労働省は、女性活躍推進法の省令・告示を改正し、情報公表項目に「男女の賃金の差異」を追加するともに、常時雇用する労働者が301人以上の一般事業主に対し、当該項目の公表を義務づけました。
今回の改正により、対象企業は、まず初回の情報公表として、施行後最初に終了する事業年度における「男女賃金の差異」の実績を、その次の事業年度の開始後おおむね3か月以内に公表しなければなりません。
女性の活躍に関する「情報公表」の具体的内容
公表しなければならない情報は、以下になります。
1.女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績
①採用した労働者に占める女性労働者の割合
②男女別の採用における競争倍率
③労働者に占める女性労働者の割合
④係長級にある者に占める女性労働者の割合
⑤管理職に占める女性労働者の割合
⑥役員に占める女性の割合
⑦男女別の職種または雇用形態の転換実績
⑧男女別の再雇用または中途採用の実績
労働者が301人以上の事業主においては、上記①~⑧のうち1項目を選択し、新設された⑨男女の賃金の差異(必須)と共に公表しなければなりません。
2.職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績
①男女の平均継続勤務年数の差異
②10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合
③男女別の育児休業取得率
④労働者の一月当たりの平均残業時間
⑤雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間
⑥有給休暇取得率
⑦雇用管理区分ごとの有休休暇取得率
労働者が301人以上の事業主においては、上記①~⑦のうち1項目を選択し公表しなければなりません。
なお、いずれの項目においても、公表する際は、「全労働者」、「正規雇用労働者」、「非正規雇用労働者」の3つの区分により公表することが求められています。
労働者が101人以上300人以下の事業主の情報公表義務
労働者が101人以上300人以下の事業主の場合、以下の16項目の中から任意の1項目以上の情報公表が必要になります。
・女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供に関する実績の①~⑨
・職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績①~⑦
コメント
男女の賃金格差は時代を経るに連れて縮小傾向にあるものの、他の先進国と比べて以前差が大きく、今後も女性の活躍を推進する必要性が叫ばれています。また、管理職に女性の割合が少ないことも問題視されています。今回の法改正により、これらの不平等・不公平を是正するための環境づくりがより一層整備されていくことが期待されています。特に大企業では、賃金差異の公表により、企業は競争力の維持や人材確保などの観点から、本制度により設けた数値目標や計画を達成していくことが求められるようになっています。
【参考】厚生労働省|女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)
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