KDDI、au通信障害で補償の検討も示唆
2022/07/05 危機管理, 民法・商法

はじめに
2022年7月2日未明から、au回線に大規模な通信障害が起き、大きな騒ぎとなりました。携帯大手のKDDIは3日中に復旧作業を終えたとし、4日の会見では「通信制限を全解除し、音声通話・データ通信とも全国的にほぼ回復した」旨発表していますが、その後も回線がつながりずらい状況が続き、ネットワーク検証が続けられています。今回は、通信障害が発生してから復旧までの流れを追うとともに、記者会見で語られた今後の対応や補償についても掘り下げます。
通信障害の発生と復旧作業
2日未明、auで通信障害が発生し、全国的に電話などがつながらない状態が続きました。KDDIの発表によると、影響回線数は最大で3,915万回線に及ぶとされており、障害規模は同社史上最大となりそうです。3日午後7時時点で同社は「徐々に復旧してきている」としていますが、その後もしばらく回線が不安定な状況が続きました。なお、西日本エリアは11時ごろ復旧作業終了、東日本エリアは17時半ごろに復旧作業が完了となりました。
通信障害による影響
この大規模な通信障害により、新型コロナウイルス感染者との連絡に支障が生じた自治体もあります。沖縄県では、県のコロナ対策本部や保健所が行っている感染者への連絡に支障が出ていたとされています。また、神奈川県相模原市では、コロナウイルスに感染して自宅療養している人への健康観察に影響が出ています。さらに、気象庁によれば、今回の通信障害の影響で、気温や降水量などを観測しているアメダスのデータが午後3時時点ではこのうち102か所で配信できなくなっていたとのことです。
大規模な通信障害の要因
3日の記者会見では、通信障害の原因について言及がありました。会見の内容によると、通信ネットワークの保守・管理のため機器の交換を行っていた際に不具合が発生し、15分間にわたって音声通話ができなくなるトラブルが発生したとのことです。KDDIではこれに対応するため、機器にデータを戻す作業を進めたものの、音声通話を管理する交換設備にアクセスが急増してしまい、アクセスの集中により完全にネットワークが使用不可能になることを防止するため、通話やデータ通信を制限せざるをえなかったと説明しています。この対応により、通話などが通じにくいエリアが全国に広がり、通話や通信に必要なデータ処理が追いつかなくなったことで、通信障害が長引いてしまったということです。iPhoneとAndroidで影響の傾向にも違いがあったことについては、iPhoneは音声通話が通らなくてもデータ通信を維持する設計であるため、データ通信のだけでなく、LINEによる通話などを使えば通話も可能なケースも多かったようです。一方、Androidではメーカーや機種による違いもありますが、音声通話の接続が通らない限りデータ通信も閉鎖する設計になっているため、データ通信もできなくなってしまったとされています。
au(5G)通信サービス契約約款と「補償」
KDDIが定める「au(5G)通信サービス契約約款」では、損害賠償に関し、以下の規定があります。
第 75 条(責任の制限)
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このように、約款上、(1)KDDIの責めに帰すべき事由、24時間以上にわたりau(5G)通信サービスが全く利用できない状態が連続したことを損害賠償の要件としています。また、金額面については、au(5G)通信サービスが全く利用できない状態の連続時間を24時間ごとに日数計算し、基本使用料・通信料・データ通信料等(直近6ヶ月の一日当たりの通信料・データ通信料を元に算出)の合計額に限定するとしています。
ちなみに、KDDIは、2013年にau4G LTEのデータ通信および音声通信に障害が生じた際は、対象顧客に対し、通信料金の700円(税抜)を減算し、これを以て補償としています。
コメント
KDDIの高橋誠社長は記者会見で、謝罪すると共に、「再発防止に向け、全力で復旧活動を推進する」と表明しました。今回の大規模通信障害による補償について、個人・法人向けに行われるかどうかについては、「一律に補償することは考えておらず、これから検討していきたい」と言及するにとどまりました。3日の午前10時からは金子総務大臣が緊急の記者会見を開いており、「国民生活や社会経済の重要インフラである携帯電話サービスについて多くの方々が長時間、利用困難な状態になっていることは大変遺憾だ。国民の生命・財産を守る消防、救急などの緊急通報に支障を生じさせたことは深刻に受け止めている」と発言しています。KDDIの今後の説明や補償の検討はまだ先になりそうです。
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