アールビバンが財務報告に係る内部統制の開示すべき重要な不備を公表
2022/07/05 金融法務, コンプライアンス, 金融商品取引法

はじめに
アールビバン株式会社は2022年6月24日付けで、金融商品取引法第24条の4の4第1項に基づいて関東財務局に提出していた2022年3月期(第38期)の内部統制報告書について、開示すべき重要な不備が見つかったことを公表しました。それに伴い、「同社の財務報告に係る内部統制は有効でない旨」を記載したとのことです。本記事では、具体的な不備の内容について見ていきましょう。
金融商品取引法の規定
金融商品取引法第24条の4の4第1項では、財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評価について規定されています。当該規定によると、有価証券報告書を提出しなければならない会社は、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、企業集団と当該会社に係る財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要なものとして内閣府令で定める体制について、内閣府令で定めるところにより評価した報告書を有価証券報告書と併せて内閣総理大臣に提出しなければならないとされています。アールビバンも本規定に基づき関東財務局へ内部統制報告書を提出しています。
開示すべき重要な不備の内容
アールビバンは、東証スタンダード市場に上場中、版画作品を中心に絵画・美術品等の展示会販売を行うアート事業を手掛ける企業です。同社は、取引先からの「支払いに漏れがあるのでは」との確認を受けたことを契機に、売上原価の一部に計上漏れがあることが判明しました。これにより、2022年2月10日に社内調査委員会を設置し、調査を実施しています。そして、調査の結果、2022年3月22日、社内調査委員会から調査報告書を受領し、過年度の売上原価の一部に計上漏れの誤謬があったという報告を受けます。報告を受け、調査報告書の内容を検討した結果、計上漏れの売上原価の修正を行うため、2017年3月期から2021年3月期までの有価証券報告書と2017年3月期第1四半期から2022年3月期第2四半期までの四半期報告書に関して、決算訂正を行い、2022年3月22日に訂正報告書を提出しています。ちなみに、計上漏れの総額は688百万円にな
るとのことでした。
アールビバンは今回の不備の主な原因として、現場担当者による取引パターンの誤認を挙げています。具体的には、アールビバンにおける版画等の取引パターンには、(i) 商品代金にロイヤリティを含めた価格の商品として、 アールビバンへ入荷するパターン(アールビバンは「仕入れ」として商品代金のみを販売管理システムへ計上する取引)と (ii) 商品代金とは別に販売または版画等の制作段階で、ロイヤリティの発生を認識するパターン(仕入れの商品代金に加え、ロイヤリティを販売管理システムへ計上する取引) があり、今回、現場担当者が(ii)のパターンで計上処理すべきところを(i)のパターンと誤認したとされています。
これに加えて、
・属人化された組織体制により、内部牽制ができなかった点
・権利義務の内容確認に対する意識向上・教育・指導が不足していた点
なども問題点として挙げています。
開示すべき不備の是正方針について
アールビバンは、財務報告に係る内部統制の重要性を認識しているとし、「開示すべき重要な不備を是正するために、社内調査委員会の調査結果を受け、再発防止策を講じて適正な内部統制の整備及び運用を図る方針である」と文書で公表しています。
また、実効性のある再発防止が確実に行えるよう、具体的には以下の施策を進めていくとしています。
①契約の書面化、及び、取引先毎の契約の統一的な管理体制の構築
②牽制機能を果たし得る組織への転換
③権利義務の内容確認に対する意識向上・教育・指導
④版画システムの機能向上
⑤経理部門による確認および監査部門による監査の強化等、内部統制を強化するための各種施策の実施
コメント
アールビバンは、今回の原価計上漏れの原因の一部として、契約管理体制の不備や現場における権利義務の内容確認に対する意識とリテラシーの低さを挙げています。これらは多くの企業の法務部門が課題として抱えている事項だと思います。
特に、近年、リーガルテック企業の台頭もあり、契約管理業務の重要性にスポットライトが当たりつつありますが、契約管理が徹底されないことのリスクの大きさを改めて認識させられる事例といえます。
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