消費者庁が「スシロー」に措置命令、おとり広告とは
2022/06/10   広告法務, 景品表示法

はじめに

 回転寿司チェーン大手「あきんどスシロー」がテレビCMなどで宣伝していた寿司を、実際には多くの店舗で販売していなかったのは違法であるとして消費者庁が措置命令を出していたことがわかりました。初日から販売していなかった店舗もあるとのことです。今回は景表法が規制する「おとり広告」について見ていきます。

 

事案の概要

 消費者庁の発表などによりますと、スシローは2021年9月14日から20日にかけて、自社HPやテレビCMで「新物!濃厚うに包み100円」「9月8日(水)~9月20日(月・祝)まで!売切御免!」などと表示していたとされます。しかし実際には、材料であるうにの在庫が実施期間の途中に足りなくなる可能性がある判断し、9月13日に、14日~17日までの4日間は店舗での販売を停止することを決定し、店長等に周知して販売がなされなかったとのことです。同様に「とやま鮨し人考案 新物うに 鮨し人流3種盛り」「冬の味覚!豪華かにづくし780円」についても広告を出していたにもかかわらず提供されなかった日があるとされます。消費者庁はおとり広告に該当するとして再発防止と景表法違反であった旨の一般消費者への周知を命じる措置命令を出しました。

 

おとり広告とは

 景表法5条各号では、実際のものよりも著しく優良であるとの表示である優良誤認表示、実際のものよりも著しく有利であるとの表示である有利誤認表示とともに、それ以外の一般消費者に誤認させるおそれがある表示として内閣総理大臣(消費者庁長官)が指定するものを不当表示として禁止しております。そして権限の委任を受けた公正取引委員会による告示で「おとり広告」に関する表示が規定されております(景表法33条、施行規則14条、15条)この指定による不当表示は他に清涼飲料水等についての表示、原産国に関する不当表示、消費者信用の融資費用に関する不当表示、有料老人ホームに関する不当表示などがあります。違反した場合には表示行為の差止め、再発防止、その他必要な事項を命じることができる措置命令の対象となっておりますが(7条)、罰則は規定されておりません。また消費者庁は調査のため報告の徴収や立入検査を行うことができます(29条)。

 

おとり広告の要件

 平成5年公取委告示17号によりますと、(1)商品・サービスについて取引を行うための準備がなされていない場合の表示、(2)商品・サービスの供給量が著しく限定されているにもかかわらず、限定の内容が明瞭に記載されていない表示、(3)商品・サービスの供給期間、供給の相手方または顧客一人当たりの供給量が限定されているにもかかわらず、その限定の内容が明瞭に記載されていない表示、(4)商品・サービスについて、合理的理由がないのに取引の成立を妨げる行為が行われている場合その他実際には取引する意思がない場合の表示が規定されております。つまり実際には購入できないにもかかわらず購入できるかのような表示ということです。なお不動産取引に関しては別途宅建業法および不動産の表示に関する公正競争規約で有利誤認表示、優良誤認表示とともにおとり広告が禁止されており、例えばすでに売約済みの物件を広告に表示すると違法となります。こちらは景表法と異なり業務停止などの行政処分ととも6月以下の懲役、100万円以下の罰金といった罰則が規定されております(81条1号)。

 

おとり広告に関するガイドライン

 消費者庁のガイドラインによりますと、「取引を行うための準備がなされていない場合」とは、広告に表示された商品が店頭に陳列されていない、広告に表示された数量の全部または一部について販売できない、広告の写真の品揃えの全部または一部を販売できない、表示された店舗の一部で販売できない店舗がある場合などとされます。広告の商品がすでに売却済みである場合や他人所有である場合も同様です。「取引の成立を妨げる行為」とは広告商品を顧客に見せない、説明を拒む、商品に関して難点をことさらに指摘する、購入を希望する顧客に執拗に他の商品を推奨するなどとされます、なお酒類について未成年に販売しないなど合理的理由がある場合は該当しないとされます。また実際の販売数量が著しく限定されている場合は、その販売数量を広告やビラ等に明瞭に記載されていなければならず、単に数量限定等の記載では足りないとされております。

 

コメント

 本件でスシローはウニやカニなどの寿司のキャンペーンをテレビCMや自社HPで宣伝していたものの、当該キャンペーン期間中の一部の期間で実際には販売していなかった店舗が9割にのぼるとされております。キャンペーン期間の全期間で販売するだけの数量を確保できておらず、一部の期間で販売停止を決定しており、店舗によっては初日から販売されていなかったとのことです。消費者庁は、取引を行うための準備がなされていない場合、または取引する意思がない場合に該当するとして措置命令を出しました。以上のように実際には提供できない、または広告した期間の全部で提供するだけの準備がない、そもそも提供する意思がない場合に広告を行った場合はおとり広告として不当表示に該当することとなります。提供できる数量が限られているにもかかわらず明瞭に数量を表示しなかった場合も同様です。広告に際しては有利誤認や優良誤認だけでなく、提供数についても正確に表示して消費者に誤認させないよう気をつけることが重要と言えるでしょう。

 

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