アイ・テック、不正金銭授受の再発防止策の進捗を公表
2022/06/13 コンプライアンス, 会社法

はじめに
株式会社アイ・テックは、同社の元役員と従業員2名が過剰な外注費支払いのキックバックを受けていた事件に関し、2022年6月1日、「再発防止策の進捗状況に関するお知らせ」にて、具体的な再発防止策の取り組みと進捗状況を公表しました。同社では、2021年7月26日に「第三者調査委員会の設置に関するお知らせ」で今回の不正を明らかにした後、2022年2月28日には、再発防止策の内容を公表していました。具体的な再発防止策としては、営業手法の見直しや交際費の規定を改正すること、監査役・内部監査担当部署に社内外からの人材を入れるなどガバナンスの強化が掲げられていました。本記事では、アイ・テックの不正発覚の経緯をおさらいするとともに、再発防止策の取り組みについて詳しく見ていくことにしましょう。
発覚した不正の内容
株式会社アイ・テックは、静岡県静岡市に本社を置く、東証スタンダード上場中の鉄鋼専門商社です。同社の取引先(アイ・テックの鉄骨工事を受託していた現場施工業者)にて法人税法違反が疑われた事案があり、その捜査の過程で、同社の元役員と従業員の2名が、2008年頃から2021年6月まで取引先と不正な金銭授受をしていたことが発覚しました。これを受け、アイ・テックは2022年1月24日の取締役会で、取引先と不正なやり取りに関与していた取締役1人の辞任勧告を決議しています。また、弁護士などで構成された第三者委員会の調査によると、元役員は2021年6月末までに施工業者に6億8,000万円の過剰な支払いをし、2億7830万円のキックバックを受けており、授受した金銭は遊興費などに使っていたことが明らかになっています。
再発防止策
ガバナンスの強化
アイテックは今回の不正な金銭授受を受け、再発防止策を進めていました。2022年6月1日に公開された文書によると、主にガバナンスの強化に関する取り組みが進められています。「取締役会の運営改善」の項目では、各役員の意識改革を図るとともに、報告事項および付議事項の見直し、取締役会の実効性の評価実行を策定しているとのことです。また、「ガバナンス・コンプライアンスの強化」項目では、内部監査部門の強化・増員を策定しており、すでにスタッフの増員が行われているほか、今後の増員に向け調整をしている段階とのことでした。
コンプライアンスの強化
コンプライアンスの強化としては、不正行為の舞台となった東京支社に管理課を設置し、通常業務のチェック体制を強化することを予定しています。また、役員へのコンプライアンスの強化としては、外部講師を招いた役員へのコンプライアンス研修をすでに実施するなど社内教育を強化しています。さらに、役員に対してはコンプライアンスに関する社内アンケートも実施しており、今後アンケート結果の集計後、7月には結果をもとに2回目のコンプライアンス研修を開催する予定としています。
人事ローテーションやルールの見直し
アイ・テックでは、今回の件を受け、取引先との癒着を避けるため、随時人事ローテーションを実施することを予定しています。また、2022年7月を目途に、量的・質的に十分な人材を確保するための人材育成計画を策定する予定とのことです。また、営業手法・接待交際費の見直しに関しては、代表取締役と役員で見直しを検討する会議を開催しているとし、こちらは2022年6月中にルールを明確化する方針です。さらに、下請け業者へのけん制については、アイ・テックと取引の多い取引先にヒアリングなどを実施するとともに、不正に関与しないことを誓約書を交わして確認しているとのことです。
コメント
アイ・テックでは、モニタリング委員会を2022年4月14日、5月9日と、既に2回開催しており、不正行為の再発防止の取り組みを進めています。不正行為の発覚は株主や取引先、消費者を含め、多くのステークホルダーの信頼を失うだけに、信頼回復にはこうしたきめ細かな情報公開が必要不可欠です。
【関連リンク】再発防止策の進捗状況に関するお知らせ
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