アジャイルメディア・ネットワークが内部統制の開示すべき重要な不備に関して報告
2022/05/27   金融法務, コンプライアンス, 金融商品取引法

はじめに


インターネット広告を手掛ける東証グロース上場企業、アジャイルメディア・ネットワークは、、金融商品取引法第24条の4の4第1項に基づいて関東財務局に提出した2021年12月期の「内部統制報告書」について、開示すべき重要な不備が見つかったため、財務報告に関する内部統制報告書は有効ではない旨の記載をし、2022年5月11日付で文書を公開しました。今回は、同社の重要な不備の内容やその後の対応について詳しく見ていきましょう。

 

“重要な不備”の背景にある元CFOによる不正出金


今回の重要な不備が生じた背景として、元CFOによる以下の不正出金があります。

(1)約3億円の小口現金の引き出し指示
元CFOは、経理担当社員に対し、1回200~1000万円ほどの小口現金の引き出しを、多い月で7回も指示していたとされています。その結果、不正な引き出し額は、2018年からの2年間で計約3億円にのぼったと言われています。さらに、監査法人に対する隠ぺい工作として、知り合いのシステム会社にシステム開発に係る架空発注を行い、領収書を偽造した上で、ソフトウェア仮勘定に計上していました。

(2)不正の協力者であるシステム会社への送金
元CFOは外部のシステム会社と共謀のうえ、架空取引を行うことで、会社のお金をシステム会社に送金し、それらを共に不正に受領していたとされています。
その際、、「秘密保持契約書」、「システム開発業務請負基本契約書」、「業務請負個別契約書」、「御請求書」、「納品書兼作業完了報告書」、「納品書」等の証憑を架空に作成していたとのことです。

 

金融商品取引法上提出義務のある内部統制報告書とは


金融商品取引法第24条の4の4第1項では、「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評価」として、内閣府令で定める会社は、事業年度ごとに、財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために、有価証券報告書と併せて内部統制報告書を提出することが義務付けられています。今回のアジャイルメディア・ネットワークの内部統制報告書についても、同法の規定に基づいて提出したものとなります。また、金融商品取引法第24条の4の5第1項においては、必要があると認めるときは、訂正した内部統制報告書の提出が規定されています。今回のアジャイルメディア・ネットワークにおける訂正内部統制報告書の提出はこの同法第24条の4の5第1項に基づき行われたものです。
 

開示すべき重要な不備の内容


今回の内部統制報告書では、2021年5月に発覚した会社の元CFOによる資金流用について、第三者委員会を設置し、全容の解明のため2021年6日21日に最終調査報告書を公表していました。しかし、第三者からの指摘を受け過去の売上・費用の計上時期について調査したところ、不適切な会計処理がなされた新たな疑義が生まれました。これを受け、アジャイルメディア・ネットワークは全容解明を図るため、2022年2月1日に外部の有識者で構成された第三者委員会設置を決議し、委員会による調査を行っています。その結果、架空売上取引、不適切な収益認識取引、不適切な費用の繰り延べが新たに発覚し、過年度決算の修正、有価証券報告書の修正、四半期決算の訂正報告をしています。
2022年4月1日公表の第三者委員会調査報告書

 

不備を是正できなかった理由


アジャイルメディア・ネットワークによると、今回不備が発覚したという事実は、取締役会の監視・監督機能不全、監査役による監査の機能不全や内部監査の形骸化・不実施等が背景にあると文書で反省の意を述べています。これらはいわゆる内部統制の問題であり、組織全体の問題として会社も認識していることが伺えます。また、全社的な財務報告プロセス、業務プロセスにも不備があったとしているようです。同社は不備を長期間是正できなかった理由として、不備について当連結会計年度の末日後に認識したため、結会計年度の末日においては是正が完了していなかったことを挙げています。

 

コメント


アジャイルメディア・ネットワークでは、金融商品取引法第24条の4の5第1項に基づき、関東財務局に対して「内部統制報告書の訂正報告書」を提出しています。また、開示すべき重要な不備は連結会計年度の末日後に発覚した都合上、連結会計年度の末日までには是正が完了できていないものの、必要な修正はすべて連結財務諸表に反映している旨公表しています。最後に、本社は財務報告に関する内部統制のより一層の強化の必要性を認識しており、開示すべき重要な不備について改善するために、第三者委員会による提言を受け止めて経営体制の見直しを行うこと、社内のコンプライアンス意識を醸成すること、内部監査体制を強化すること、再発防止策に関するモニタリングを行うことなどを明記し、今後の再発防止に努めることを説明しました。今回の事例は、監視・監督・監査機能の形骸化・不実施がもたらすリスクが明るみになったものだと思います。やはり、定期的な、監視・監督・監査機能の実態把握が重要になりそうです。
 

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