コロナ融資の違法仲介で懲役2年求刑、貸金業法の規制について
2022/05/11   コンプライアンス, 行政対応

はじめに

 新型コロナウイルス関連融資を違法に仲介したとして、環境関連会社役員が貸金業法違反の罪に問われていた事件で、検察側が懲役2年を求刑していたことがわかりました。共犯とされる遠山被告にはすでに有罪判決が出ているとのことです。今回は貸金業法の規制について見ていきます。

 

事件の概要

 報道などによりますと、元財務副大臣で元公明党衆院議員の遠山被告(52)は2020年3月頃から21年6月頃にかけて計100回以上にわたり、日本政策金融公庫の新型コロナウイルス対策特別融資を違法に仲介していたとされます。そのうち29回は太陽光発電関連会社「テクノシステム」元顧問の牧被告(72)と共謀して行われたとのことです。牧被告は仲介手数料としておよそ2700万円を得ており悪質であるとして、検察側は懲役2年、罰金200万円を求刑しました。遠山被告についてはすでに懲役2年、執行猶予3年、罰金100万円の有罪判決が出ております。

 

貸金業と登録

 貸金業法によりますと、貸金業を営もうとする者は、2以上の都道府県で営業する場合は内閣総理大臣の、1の都道府県で営業する場合は都道府県知事の登録を受けなければならないとされます(3条1項)。この登録は3年ごとに更新する必要があり、期間経過によって失効します(同2項)。登録の申請に対して内閣総理大臣または都道府県知事は、心身の故障により適正に業務が行えない場合、破産手続き開始決定を受けて復権していない場合、すでに登録取消を受けて5年を経過していない場合、禁錮以上の刑を受けて5年を経過していない場合、現に暴力団員であるか、過去5年以内に暴力団員であった場合などに該当するときは登録拒否となります(6条)。登録を受けないで貸金業を行った場合、または不正の手段で登録を受けた場合は10年以下の懲役、3000万円以下の懲役またはこれらの併科となっております(47条1号、2号)。

 

貸金業とは

 貸金業法2条1項によりますと、「貸金業」とは、金銭の貸付または金銭の貸借の媒介を業として行う場合を言うとされます。例外として、国または公共団体が行う場合、他の法律に特別な規定がある場合、物品の売買、運送、保管または売買の媒介を業として行う者がその取引に付随して行う場合、事業者がその従業者に対して行う場合、その他政令で定める場合は該当しないとされます。このように金銭の貸付またはその媒介を行う者は貸金業に該当することとなり、上記のように登録を受けなければ行うことはできません。以下「金銭の貸借の媒介」について具体的に見ていきます。

 

金銭の貸借の媒介

 「金銭の貸借の媒介」とは金銭の貸し手と借り手の間に立って、契約の成立に尽力する行為と言うとされます。また金融庁の法解釈によりますと、(1)金銭の貸借を内容とする契約の締結の勧誘、(2)契約の勧誘を目的とした商品説明、(3)契約の締結に向けた条件交渉はいずれも原則として「金銭の貸借の媒介」に該当するとされております。そして(4)商品案内チラシ・パンフレット・契約申込書等の単なる配布、(5)契約申込書等の受領・回収、(6)住宅ローン等の説明会における一般的な住宅ローン商品の仕組み・活用法等についての説明については、契約の締結に向けて配布する場合や、記載内容の確認、説明を行った場合には該当する場合があるとされております。いずれも一連の行為がどの程度、契約締結に向けて行われているかを総合的に判断しているとされます。

 

コメント

 本件で元財務副大臣の遠山被告と牧被告は共謀して、日本政策金融公庫からの融資を希望する会社などを無登録で公庫担当者に紹介し続けたとされます。両被告は融資を希望する者と公庫の間に立って融資実現に尽力したと言え、登録が必要な媒介を行ったものと考えられます。以上のように自ら金銭を業として貸す場合だけでなく、その仲介を行う場合も貸金業法の適用を受けます。文字通り仲介するだけでなく、チラシやパンフレットの配布、申込書を受け取る、ローンの説明をするといった行為でも、場合によっては該当する場合もあるとされております。自社がこれらの行為を行う場合だけでなく、有力者に融資担当者の紹介を依頼する場合も注意が必要と言えます。今一度これらの規定を確認しておくことが重要と言えるでしょう。

 

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