セブンの高額違約金に対してFC店の元オーナーが公取委に調査申し入れ
2022/04/11 フランチャイズ, 独占禁止法

はじめに
大手コンビニエンスストア「セブンイレブン」が店舗の契約解除で高額な違約金を請求したとして、フランチャイズ店の元オーナーが公正取引委員会に調査を申し入れました。今回はフランチャイズ契約におけるトラブルについて掘り下げていきます。
事件の概要
報道によりますと、鹿児島県内にあるセブンイレブンのフランチャイズ店の元オーナーは、2019年の九州豪雨災害の際に、商品の配送が遅れ、発注と納品が合っているかどうか検品ができなくなったことを理由に、セブンイレブン側が求める伝票の作成を拒んだとされています。その後も、元オーナーは、店の商品管理システムの仕様上、納品の遅れを適切に確認できないとしてシステムの不備を指摘し続けるなど、セブンイレブン本部と対立して来ました。これを受けて、セブンイレブン本部は、昨年11月、「信頼関係の破綻」を理由に元オーナーとのフランチャイズ契約を解除し、合わせて、元オーナーに対し、およそ1200万円の違約金を請求しました。
これに対し元オーナーは「優位的地位の濫用で、独占禁止法違反だ」として公正取引委員会に調査を申し入れています。元オーナーは3月28日に大阪市内で会見を開き「よりよいパートナーであり続けたい。加盟店だけに負担がかかっているのが変わっていただければ」と話しました。一方のセブンイレブンは「会計上の不正行為や取引先などへの理不尽な行為を繰り返していて、改善が見られなかったため契約解除に至った。本件については、今後も事案内容や相手方の主張を確認し、適切に対処していく」と説明しており、事実認定の部分で争いが生じています。
フランチャイズ契約におけるトラブル
フランチャイズ開業は、フランチャイズ本部のブランドの使用や運営ノウハウの提供など、個人開業に比べてメリットが多数あります。その一方で、フランチャイズ本部と加盟店の間でのトラブルが後を絶ちません。特にフランチャイズ契約の代名詞とも言えるコンビニでは、加盟店が本部を提訴するケースが頻発しており問題視されています。では、実際どのようなトラブルが発生しているのでしょうか?
公正取引委員会の報告書によりますと、トラブル事例として多いのが、「契約時に提示された売上予測と実際の売上がかけ離れている」というケースだそうです。担当者の説明不足や加盟店オーナーの過度な期待もさることながら、フランチャイズ本部の規模拡大の方針を背景とした強引な勧誘も見受けられるといいます。また、加盟店に与えられる裁量の範囲をめぐってトラブルになるケースもあり、2019年にはセブンイレブンのフランチャイズ店オーナーが人手不足などを理由に時短営業に踏み切ったところ、契約違反を理由に1700万円の請求と契約解除を言い渡されたというトラブルが注目を浴びました。その他にも、オーナー側がフランチャイズ加盟にあたって最も期待しているノウハウの提供が不十分であったという不満の声も多く集まっています。
このように、トラブルが相次ぐ中で、公正取引委員会は、2020年9月に、コンビニ各社に対し、24時間営業の強制やドミナント出店(既存店との約束を破って周辺に新規店舗を出すこと)などは、フランチャイズ本部による「優越的地位の乱用(独占禁止法上)」にあたると警告を出しています。
それを契機に、フランチャイズ本部も改めて加盟店オーナーとの関係を見直す動きを見せていますが、いまなお加盟店オーナー側が苦しい立場に立たされているケースが少なくないようです。
コメント
今回は、トラブルが多いコンビニのフランチャイズ契約を取り上げました。フランチャイズ契約そのものは、適切に締結・運用されれば、フランチャイズ本部側・加盟店オーナー側、双方にとってメリットの大きい契約形態です。例えば、フランチャイズ本部側から見た場合、フランチャイズ契約は、多店舗展開による規模拡大に加え、ロイヤリティ徴収による安定的な収入の確保という大きなメリットがあります。一方で、加盟店オーナーとしても、ブランド力の利用による集客効果、フランチャイズ本部から提供されるノウハウを活用することでの、参入障壁の低さなどのメリットがあります。
しかしながら、フランチャイズ本部の力関係の強さを反映した一方的な契約内容や加盟店オーナー側の他力本願な姿勢などが対立構造を生み出す原因となっています。このようなトラブルを解消していくには双方が歩み寄って十分なコミュニケーションを図っていくことが重要と言えます。また、加盟店オーナー自身の理解や自立はもちろんのこと、弱い立場になりやすい加盟店オーナーを保護する制度・ルールの整備なども求められています。
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