チキンラーメンのパッケージを登録、「色彩商標」とは
2022/04/05 知財・ライセンス, 商標法

はじめに
日清食品ホールディングスは4日、即席麺「チキンラーメン」のパッケージの配色を商標登録したと発表しました。色彩だけの商標登録は珍しいとのことです。今回は色彩商標について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、日清食品の「チキンラーメン」は1958年に創業者の安藤百福氏が世界初の即席麺として発売し、当時からストライプを基調としたデザインであったとされます。今回はその白とオレンジとセピア色の3色のストライプの色彩が商標登録されたとのことです。登録出願は2018年7月とされ、登録までに3年以上を要しているとされます。同社は、長年にわたりデザインを守り続けてきた結果、パッケージの配色だけでも「チキンラーメン」と認識してもらえるようになったとしております。
商標と商標登録
商標法2条1項によりますと、「商標」とは、人の知覚によって認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状もしくは色彩またはこれらの結合したものであり、業として商品・役務に使用するものとされております。つまり事業者が他人のものと区別するために使用するマークということです。そのマークと、それを使用する商品をセットにして登録されることにより商標権が発生します(18条)。商標登録は特許庁に出願する必要があり、商標登録を受けないまま商標を使用していると、他社が先に登録をうけてしまうと、こちらが商標権侵害となってしまう可能性があります。商標権が侵害された場合、商標権者は侵害者に対して侵害の停止または予防を請求することができ(36条)、損害賠償請求をすることができます。その際の侵害額の推定規定も置かれております(38条)。また罰則として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科が規定されております(78条)。
商標登録の手続きの流れ
商標登録の出願がなされますと、出願の日から2~3週間で出願内容が一般に公開されます。そして商標審査官によって方式審査や実体審査が行われます。ここで登録ができないものとして、(1)自己の商品・役務と他人のものとを区別できないもの、(2)公益に反するもの、(3)他人の商標と紛らわしいものなどが挙げられます。たとえば商品「野菜」について「北海道」といったものや商品「果物」について「APPLE」といったものは誰の商品か区別がつかないことから登録はできないとされます。また国旗や卑猥なもの差別的なものや「ビール」に「ウイスキー」といった実体と表示が一致しないものも公益に反するとされます。これら拒絶理由に該当する場合は申請人に通知されます。申請人はそれに対して意見書や補正書を提出し、査定が行われ、通過すれば登録料を一括納付して商標登録がなされることとなります。商標権は登録の日から10年間存続し、更新することも可能です(19条1項、2項)。
新しいタイプの商標
商標は平成26年改正によって、これまでの文字や図形といったもの以外の新しいタイプの商標も登録することができるようになりました。具体的には(1)動き商標、(2)ホログラム商標、(3)色彩のみからなる商標、(4)音商標、(5)位置商標です。動き商標は文字や図形等が時間の経過にともなって変化するものとされ、TVやコンピューター画面に映し出される文字や図形などと言われております。ホログラム商標も同様に文字や図形がホログラフィーその他の方法によって変化するものです。音商標は音楽、音声、自然音などからなり、CMなどで使用されるサウンドロゴやPCの起動音などとされます。位置商標は文字や図形などを商品等に付す位置自体が特定された商標とされます。そして色彩商標は、単色または複数の色彩の組み合わせのみからなる商標とされます。商品の包装紙や広告用看板などに使用される色彩などとされます。実際に登録されている例としてはセブンイレブンやファミリーマートの看板の色彩などが挙げられます。
コメント
本件ではチキンラーメンのパッケージの白とオレンジ色のストライプ状の色彩が商標として登録されました。上記のように新しいタイプの商標と言えます。通常の商標と異なり色合いだけを商標として保護するものであることから、登録が認められるためのハードルはかなり高いと言われております。どれだけ一般に定着し認識されているかをあらゆる資料を提供して立証していくことが求められます。実際に平成26年改正以降、色彩商標が認められたケースはわずか数件しかないとされております。しかしそれだけに一般国民に広く認知されている証とも言えます。商標権として認められる商標にはどのような種類があるのか、またどのような手続きを要するかを把握して、自社に必要な商標権取得を検討していくことが重要と言えるでしょう。
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