鉄鋼再編へのハードル
2011/02/10 独禁法対応, 独占禁止法, メーカー

記事
新日本製鉄と住友金属工業が、2011年2月3日に、2012年10月を目安に合併すると発表。
4日に、合併が独占禁止法に抵触するか否かの審査を公正取引委員会に申し入れた。
9日、公取委は会見で、両社が抱える鉄鋼製品について、自動車メーカーなど国内のユーザーが海外企業からも調達可能である場合は、国際市場でのシェアを寡占状況の判断基準とする考えを示した。また、「シェアだけでなく競争者や輸入品の状況、参入者や利用者の交渉力などで判断する」とコメント。
新日鉄と住金は、合併後の粗鋼生産規模が世界2位になる見通し。
鉄鋼業は、装置産業であり、規模が大きくなればコストが下がり、価格競争力も増す。
そのため、世界最大手アルセロールミタルや中国企業に対抗する手段として、合併による効率化の道を選んだ。
問題点
本件では、両社の合併が、「一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合」(独占禁止法15条)にあたるか否かが問題となる。
「競争を実質的に制限することとなる」の文言解釈
「競争を実質的に制限するとは,競争自体が減少して,特定の事業者又は事業者集団がその意思で,ある程度自由に,価格,品質,数量,その他各般の条件を左右することによって,市場を支配することができる状態をもたらすことをいう」と判示した。(昭和28 年12 月7日東京高等裁判所判決)
「こととなる」とは,企業結合により,競争の実質的制限が必然ではないが容易に現出し得る状況がもたらされることで足りるとする蓋然性を意味する。
判断材料として、以下の要件が考えられる。
・当事会社グループの地位(市場シェア及びその順位、競争の状況など)
・競争者の状況(競争者の市場シェアとの格差、供給余力など)
・輸入による競争者の有無(制度上の障壁の程度、流通上の問題など)
・新規参入の有無(参入障壁の程度など)
・隣接市場・需要者からの競争圧力
今後の展開
公取委会見のコメントは、ガイドラインに沿った内容と考えられる。
今後、独禁法に抵触すると判断された場合には、一部事業の譲渡など対策を取る必要がある。
パナソニックが三洋を子会社化するにあたり、ニッケル水素電池事業を売却したことも、中国の独禁法抵触を回避する手段であり、類似の対応を迫られるだろう。
また、他国の独禁法に抵触しないかも検討しなければならないだろう。
参考
【参考条文】
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年四月十四日法律第五十四号)
第十五条 会社は、次の各号のいずれかに該当する場合には、合併をしてはならない。
一 当該合併によつて一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合
二 当該合併が不公正な取引方法によるものである場合
○2 会社は、合併をしようとする場合において、当該合併をしようとする会社(以下この条において「合併会社」という。)のうち、いずれか一の会社に係る国内売上高合計額が二百億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超え、かつ、他のいずれか一の会社に係る国内売上高合計額が五十億円を下回らない範囲内において政令で定める金額を超えるときは、公正取引委員会規則で定めるところにより、あらかじめ当該合併に関する計画を公正取引委員会に届け出なければならない。ただし、すべての合併会社が同一の企業結合集団に属する場合は、この限りでない。
○3 第十条第八項から第十項までの規定は、前項の規定による届出に係る合併の制限及び公正取引委員会がする第十七条の二第一項の規定による命令について準用する。この場合において、第十条第八項及び第十項中「株式の取得」とあるのは「合併」と、同条第九項中「株式の取得」とあるのは「合併」と、「が株式取得会社」とあるのは「が合併会社のうち少なくとも一の会社」と、「、株式取得会社」とあるのは「、合併会社」と読み替えるものとする。
【関連リンク】
企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針
合併の届出制度
平成21年 鉄鋼業界の動向
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