オリンパスのグループ会社が特別清算、会社の解散について
2022/01/11 商事法務, 総会対応, 会社法

はじめに
オリンパスのグループ会社「オリンパスメモリーワークス」(新宿区)が昨年12月に東京地裁から特別清算開始命令を受けていたことがわかりました。昨年3月期には約3億2700万円の債務超過に陥っていたとのことです。今回は会社の解散と精算について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、オリンパスメモリーワークスはオリンパスの100%出資により2010年2月に設立され、デジタル画像をオンライン保存するフォトクラウドサービス「ib
on the
net」の運営やIDカード作成ソフト「スナップカード倶楽部」の販売を行っていたとされます。2013年には約6億7800万円の売上を計上していたものの、毎期欠損を計上し、2021年3月には約3億2700万円の債務超過に陥り、同年11月15日の株主総会決議により解散したとのことです。なお同社は東証一部に上場しておりました。
会社の解散と精算
株式会社は定款で定めた存続期間の満了、解散事由の発生、株主総会の特別決議、合併による消滅、破産手続開始決定、裁判所による解散命令などによって解散します(会社法471条)。また最後に登記をしてから12年以上新たな登記がされない場合もみなし解散となる場合があります。会社が解散しますと精算手続きに入ります。精算中の会社は精算のみを会社の目的とすることから定款の目的変更や剰余金の分配、資本金や準備金の減少、自己株式の有償取得、株式交換などの組織再編行為が原則禁止されます。株式発行や本店・支店の移転などは従来どおり可能です。自己株式の無償取得も財産の払い戻しとはならないことから可能とされております。
精算の手続き
会社が解散しますと、取締役や代表取締役、会計参与、会計監査人、監査等委員、指名委員等は退任することとなります。例外的に監査役だけは退任しません。解散登記と清算人就任登記をすることとなります。定款や株主総会で清算人を定めなかった場合は解散時の取締役がそのまま法定清算人となります(478条1項)。そして現務の結了や財産目録と貸借対照表を作成、債権者意義手続き、解散事業年度における確定申告、資産の現金化と債権債務の精算、残余財産確定を行い、決算報告と承認決議を経て清算結了登記を行います。この清算結了登記で当該会社の登記は閉鎖されることとなります。なお破産手続が開始されている場合は破産管財人による精算が行われますが、手続き費用すら残っていない場合は同時破産廃止となります。この場合、もしわずかでも残余財産が残っている場合はやはり会社法の精算手続きとなり、裁判所が清算人を選任するとされております(最判昭和43年3月15日)。
会社法の特別清算手続き
精算株式会社の精算の遂行に著しい支障をきたす事情がある場合や債務超過の疑いがある場合に、債権者、清算人、監査役、株主の申し立てにより裁判所は特別清算開始を命じることとなります(510条、511条)。特別清算は裁判所の監督のもとで行う厳格な精算手続きです。破産手続きよりも柔軟で簡易・迅速な手続きとされており、また「破産」というマイナスイメージを回避できるメリットがあると言われております。ただし弁済計画である協定案に対して債権額の3分の2以上の債権者の同意を要するなど、手続きの遂行が債権者次第な点もあり破産手続きよりも時間を要する可能性もあります。複数回の債権者集会と協定案の採決、裁判所による認可決定、それに基づく弁済を経て特別清算結了となります。なお債務超過の疑いがある場合は清算人に特別清算申し立てが義務付けられます(511条2項)。
コメント
本件でオリンパスメモリーワークスは昨年3月期の時点で約3億7000万円の負債があり、約3億2700万円の債務超過となっていたとされます。この場合清算人に特別清算開始の申し立てが義務付けられることから、特別決議による解散後、特別清算に入ったものと考えられます。代表清算人は代表取締役であった今野博文氏が就任しております。以上のように会社は解散すると監査役以外の役員は退任となり精算手続きに入ります。清算人、代表清算人が就任し資産の現金化や弁済、残余財産分配を行います。負債額によっては破産や特別清算手続きによることとなります。子会社の精算などを検討している場合には、どのような手続きが必要か、またどのような流れになるのかを予め把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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