公取委がソフトウェア業界を実態調査へ、買いたたきについて
2021/10/22 コンプライアンス, 下請法, IT

はじめに
公正取引委員会は20日、ソフトウェア開発業界の実態調査を開始すると発表しました。フリーランスのエンジニアなど下請け業者の立場にある者に不当な値下げ要求などを行っていないかを調べるとのことです。今回は下請法の「買いたたき」について見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、公取委はソフトウェア開発などを手掛ける国内2万1000社を対象に、下請け業者に不当な買いたたきなどが行なわれていないかなどの実態調査に乗り出す方針を発表しました。ソフトウェア業界は下請け発注が繰り返される多重構造にあり、著しく低い価格での納入を下請け業者に求める懸念が出ているとのことです。
実際に同業界ではこのような違反事例が増加傾向にあり、昨年度の公取委による指導件数も710件と前年度の1割増しとされております。また公取委は新型コロナウイルス感染症の拡大による需要減少を理由に、下請け業者への買いたたきや受領拒否といった違反事例が増加することを懸念しております。
下請法による規制
下請法では、親事業者の資本金が3億円超の場合は下請事業者の資本金が3億円以下、親事業者の資本金が1000万円超~3億円以下の場合は下請事業者の資本金が1000万円以下といった具合に互いの資本金の額が一定の範囲にある場合に下請法が適用されることとなっております(2条1項~8項)。
下請法が適用される場合、親事業者には書面の交付(3条)や書面の作成・保存(5条)、代金支払い期日の決定(2条の2)、遅延利息の支払い(4条の2)などが義務付けられます。また禁止事項として、受領拒否、代金支払い遅延、減額、返品、買いたたき、購入・利用強制、報復措置、割引困難な手形の交付、不当な経済上の利益の要求、不当な変更・やり直しなどが禁止されます(4条1項、2項)。
違反に対しては勧告などがなされ(7条)、書面の作成・交付義務違反には罰則として50万円以下の罰金が規定されております(10条)。
買いたたき
買いたたきとは、下請事業者の給付の内容と同種または類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めることとされております。公取委のガイドラインによりますと、「通常支払われる対価」とは、同種または類似の給付について、当該下請事業者が属する取引地域での一般に支払われる対価(通常の対価)と言われております。そして買いたたきに該当するかの判断に当たっては、代金の決定にあたり下請事業者と十分な協議が行なわれたかなどの対価の決定方法、差別的であるかの決定内容、通常の対価と支払われる対価との乖離状況、給付に必要な原材料等の価格動向などを勘案して総合的に判断するとされております。
買いたたきの具体例
ガイドラインでは、多量の発注をすることを前提に下請事業者に見積もりをさせ、その価格で少量しか発注しない場合、量産期間が終了しているにもかかわらず、量産時の価格のまま一方的に価格を決定することなどが買いたたきに該当するとされます。また原材料等のコストが大幅に上昇し、下請事業者が単価引き上げを求めたにもかかわらず、一方的に従来どおりの単価に据え置く場合も該当しうるとされます。
実際の違反事例として、親事業者の競争力強化を目的として主要な部品について一律に下請単価を引き下げた例や、あらかじめ下請代金を定めずに部品を発注し、納品された後に通常の対価に比べて大幅に低廉な価格で一方的に下請代金を定めた例、データベース用ソフトウェアの納期を大幅に短縮した上、当初の見積もり額よりも大幅に減額した下請代金を決定した例が挙げられております。
コメント
近年新たな働き方としてフリーランスで働くエンジニアや技術者などが増加しております。しかしその一方で取引先業者から一方的に契約を破棄されたり、通常よりも著しく低廉な価格で買い叩かれたり、一方的に価格を減額されるといった例も増加していると言われております。また近年のコロナ禍による需要の低下を下請事業者に転嫁するといった事例も増加傾向にあるとされます。
それを受け公取委では特にそのような傾向が顕著なソフトウェア開発業界で実態調査を行う方針です。また上記のとおり下請法の適用は親事業者の資本金が1000万円を超える場合からとなっておりますが、近年のこのような動向を踏まえ、下請法の適用範囲を拡大する法改正の動きも出ております。下請事業者を使用している場合は、今一度買いたたきなどを行っていないか確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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