有名人の商品価値を考えよう!
2010/12/22 知財・ライセンス, 民法・商法, エンターテイメント
女性タレント21人が今月の20日、写真などを雑誌に無断掲載したことを理由に、パブリシティー権やプライバシー権の侵害を主張し、発行元の笠倉出版社に計約2300万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。
無断転載が問題となった雑誌は「ENJOY MAX」など5冊で、過去に発売された写真集や雑誌グラビアからの無断転載や、プライベート写真の無断掲載などがあったとされている。
【パブリシティ権について】
まず、今回権利侵害として問題となっているパブリシティ権について検討する。パブリシティ権とは、タレント等の有名人の氏名・肖像を財産的に利用する権利であると一般的にいわれている。
有名人の氏名・肖像は、CMなどで商品の販売を促進する力を有している。このことから、経済的な利益及び価値を有しているといえる。
ゆえに、有名人の写真を無断使用することは、パブリシティ権の侵害となる。パブリシティ権の侵害行為に対しては、損害賠償請求と差止請求をすることができる。
ここで、肖像権との違いについてだが、肖像権は有名人でなくとも、すべての人が有する権利であり、何人もみだりに自己の容貌などを、その意に反して撮影されない権利としている。パブリシティ権と肖像権との違いは、顧客誘引力のある性質を有し、そこに人格的な権利とは別に財産的な価値をも有する権利がある点にある。
【今回の問題点】
今回の事件で問題となっているのは、過去に発売された写真集などから無断で写真を転載したことにある。本来であれば、所属事務所など権利保有者に転載についての了承をとっておくべきことである。
このパブリシティ権は、タレントや所属事務所が有名になるまでに、かなりの投資をして商品価値を作ってきている。ゆえに、パブリシティ権の侵害がある場合には、これらの投資回収についての機会を損失させていることにもなる。対象が有名人という人間ではあるが、違法コピーなどと同様の問題を本質的には持っているのではないか。
【今後の動向】
今現在は、訴訟を提訴したという段階にすぎないので、今後の動向は不明であるが、このような事態が起こらないように強く思う。
【過去の裁判例】
・「美容外科ホームページ女優の顔写真等無断掲載事件」(平成20年12月24日東京地方裁判所(平成20(ワ)7828)/平成21年06月29日知的財産高等裁判所(平成21(ネ)10009))
・「おニャン子クラブ事件」(東京高判平成3年9月26日(判時1400号3頁、判タ772号246頁)
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