七五三の前撮りで不当表示、ガイドラインから見る有利誤認
2021/09/21 広告法務, 消費者取引関連法務, 景品表示法, その他

はじめに
七五三の前撮り費用が期間限定で割引になるとした広告が有利誤認に当たるとして、消費者庁は14日、写真スタジオ「ハピリィ」に対し再発防止を命じていたことがわかりました。販売実績のない通常価格を表示していたとのことです。今回は景表法の有利誤認表示をガイドラインから見なおします。
事案の概要
消費者庁の発表などによりますと、ハピリィは2020年5月14日から6月29日にかけて、「オフシーズンの七五三撮影は断然お得」「通常価格38,700円が最大47%Off19,800円(税抜) 土日祝日は24,800円(税抜)」等の表示をしていたとされます。しかし実際には「通常価格」と称する価格での販売実績は無く、期間外で撮影した場合でも同様に割り引かれた価格で撮影することができていたとのことです。これに対し消費者庁は景表法の有利誤認に該当するとして同社に再発防止を命じる措置命令を出しております。
有利誤認とは
景表法5条2号によりますと、商品または役務の価格その他の取引条件について、実際のものまたは同業他社のものよりも著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある表示は不当な有利誤認表示として禁止されております。違反した場合には消費者庁長官により差し止めや再発防止を命じる措置命令(7条)が出され、また課徴金納付命令が出される場合があります(8条)。そしてこれらの行政処分を行うに際して必要があると認める場合は事業者に報告や帳簿の提出を命じたり、立入検査や関係者に質問をすることがあります(28条)。
有利誤認の成立要件
消費者庁のガイドラインによりますと、「有利であると一般消費者に誤認される」とは、その表示によって販売価格が実際と異なって安いという印象を与えることを言うとされ、「著しく有利」と誤認さえるかは、表示が一般的に許容される誇張の程度を超えて選択に影響を与えるような内容かで判断されると言われております。さらにその判断にあたっては表示媒体の表示内容全体を見て判断するとし、事業者に故意または過失の有無は問題とされないとされております。そして価格の表示にあたっては、(1)販売価格、(2)適用される商品の範囲、(3)適用される顧客の条件について正確に表示する必要があり、これらの点について実際と異なっていたり、曖昧である場合は不当表示となるおそれがあるとしております。
二重価格表示
有利誤認に関する表示で多いのが二重価格表示です。二重価格表示とは自社の過去の販売価格や希望小売価格、同業他社の販売価格などを併記して表示するものを言います。例えば「通常価格○○円のところ今だけ50%OFF○○円」といった表示です。この通常価格が相当期間にわたって実際に販売されていた場合は適法とされますが、その判断にあたっては販売時期と期間、一般的な価格変動の状況、販売形態などを個別的に考慮されます。おおむね8週間さかのぼって、その価格で販売されていたい期間が過半を占めていればよいとされ、2週間に満たない場合は「相当期間」とは言えないと判断される可能性が高いと言えます。
コメント
本件では七五三の前撮りはオフシーズンに行うと、通常37,800円であるところ、47%OFFで19,800円で撮影ができる旨表示されておりました。しかし実際にはこの通常価格で販売された実績は無く、各サービスの単品料金を合算したものにすぎなかったとのことです。架空の価格を併記した二重価格表示であり有利誤認に該当すると言えます。以上のように希望小売価格や通常価格、他社の価格を併記して、いかに安いかを表示する方法は一般的に広く行われております。しかしその価格が存在しない価格である場合には違法となります。割引や特別セールを行う際には、これらの点を踏まて、架空の価格を表示していないか、実際に自社で販売していた期間はどれくらいかを慎重に確認しておくことが重要と言えるでしょう。
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