国上精機工業等3社 民事再生手続から破産手続へ移行する見通し
2021/08/10   事業再生・倒産, 倒産法, 破産法, その他

はじめに

 国上精機工業(株)(代表馬場丈夫氏)は、4月16日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請し、22日に再生手続開始決定を受けていました。

そしてその後、同社は7月27日に再生手続廃止決定ならびに保全管理命令を受けました。今後、8月末までに破産手続へ移行する見通しです。

 また、同じく民事再生手続中だった、持ち株会社の国上精機工業ホールディングス(株)(同代表、2014年1月設立)、子会社で工業用プラスチック成形の(株)アイエヌテック国上(同代表、2019年2月設立)の2社も、同様の手続きをとる見通しとなっております。

事案の概要

 同社は、1967年2月に創業し、69年10月に法人へと改組したプラスチック関連部品製造業者であり、カーオーディオパネル、携帯電話ケースを中心に、医療機器部品等のプラスチック成形部品の製造を行っていました。

独自のプラスチック成形加工技術が優れており、自動車メーカーの新車種に搭載されるカーオーディオやカーナビゲーションに関しては同社の一体型3Dエスカッションパネルが採用されるなどし、2020年12月期の年売上高は約21億5000万円を計上していました。

 しかし、近年は自動車業界の再編が進んでおり、生産拠点を海外に移転するメーカーが多いといえます。同社も同様に海外進出し売上を確保すべく努力していましたが、受注は落ち込んでいました。

この間、グループ再編を推し進め、生産効率の改善やコスト削減を行っていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響等により業況が悪化しました。

 今年2月に同業の代表者が同社グループのスポンサーとなり、4月の再生法手続の開始申請後は再生計画案の策定を進めていました。そして、7月26日に再生計画案を提出する予定でしたが、将来的に利益を計上できる事業計画の策定が困難となり、決議に付するに足りる計画案の作成見込みが立たなくなり、今回の措置を採らざるを得なくなりました。

牽連破産とは

 本件では、民事再生手続から破産手続へ移行する見通しですが、このように民事再生手続が進行していたところ、それがたちいかなくなりやむを得ず破産手続きに移行することを牽連破産と言います(民事再生法248条以下)。

 破産手続は最後の手段であり、それは再生手続によって解決できるのであれば、そちらを優先すべきという価値判断に基づくものです。

 そもそも、民事再生手続や破産手続といった倒産手続は、経済的にたちいかなくなった会社及び個人の債権者に平等に弁済・配当し、かつその利益を最大化するという制度です。そのため、本件のように将来的に利益を計上する見込みが立たない場合等には、債権者にとって利益が大きい破産手続を利用すべきということになります。

コロナ禍の倒産件数

 2020年から始まったコロナ禍における倒産件数は、昨年や一昨年と比較すると減少しています。これは政府が打ち出した補償金等の支援策や、政府が金融機関に資金繰り支援をするよう強く要請したり、金融機関が迅速な緊急融資等をしたり、企業の資金繰りがしやすくなったことが要因となっているとみられています。

信用保証協会が発表している信用保証承諾件数は2020年3月から急増しており、保証協会付き融資が積極的に利用されたことがわかります。しかし、官民による支援策はいつまでも続くわけではなく、支援が打ち切られるまでの間に経営難の企業としては何らかの善後策を講じる必要があります。

コメント

 コロナ禍により先行きが不透明なことが多く、企業としては資金繰り等どう対策を講じればいいのか難しい状況が続いています。企業法務従事者としては、民事再生手続の利用等を含め、企業存続のためにできる策を予め講じておくことが必要でしょう。

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