東電会長 「丸投げ体質あった」不祥事続出で再建計画申請
2021/07/27   事業再生・倒産, 倒産法, 破産法, その他

はじめに

 東京電力ホールディングスの小林善光会長が21日、経済産業相との会談後に報道陣の取材に応じ、東電の収益の低下を憂慮し、安定的に稼げるよう企業価値を上げるべく、新たな再建計画を政府に申請しました。

事案の概要

 東京電力ホールディングスと政府出資の原子力損害賠償・廃炉等支援機構は、共同で再建計画をつくり政府の認定を受ける必要があるため、福島第一原発事故以降に政府に対し再建計画を申請して本年4月21日に認定を受けていました。

 しかし、東電は福島第一原発の廃炉や賠償の費用を確保する必要があるにもかかわらず、収益が低下していることから、再建計画の変更の認定を受ける必要が生じたため、再建計画を新たに申請する運びとなりました。

危機時の法的整理

 一般的な企業が債務超過・支払不能となった場合には、倒産制度を利用することとなります。倒産制度とは、破産・特別清算の清算型と、民事再生・会社更生の再建型の2種類に区分でき、法的整理手続きによらずに中立な第三者を介在させ債権者の協力を得ながら事業再生を図る事業再生ADRという制度等もあります。

 そして、すべてに共通して言えるのは、債権者は十分な満足を得られないということです。今回の東電の件では、上記のどのパターンにも該当しないケースとなります。経済産業省の説明によると、法的整理制度を利用してしまうと被害者への賠償が十分ではなくなってしまうため、被災者重視で法的整理はしないとのことです。

国主導の整理

 東電任せにするのではなく、復興のために国が前面に立ち多額の資金を投入しています。東電は原発問題や多額の賠償金を背負っており、後始末をせずに廃炉・汚染水や賠償責任等を満足に処理せずに企業を解体することは許されないとの考慮が働いたものと考えられます

 東電がその他の一般企業と異なるのは、倒産した場合に多数の国民の生活に多大な影響を与えるという点にあります。このように政府が主導となり倒産制度によらずに処理するケースは珍しいですが、国民の生活に深くかかわるインフラ企業にとっては他人事ではありません

コメント

 はじめに、被災者の方に一刻も早く賠償されることを願っております。東電の例は、危機時の処理に関して例外的な取り扱いと位置づけられますが、インフラ企業にとっては他人事ではありません。

 実はコロナ禍になってから倒産件数は減少しました。その理由として持続可給付金が付与されたことが挙げられます。しかし、生きながらえた企業が多いとはいえ、来年度以降に持続可給付金に課税される場合があり出費がかさむことを考えると、倒産制度を利用する企業が今後増えると予想されます。

 企業法務従事者としては、自社がインフラ企業である場合には有事の際にどのような法的整理手続きを利用するのか、また政府に支援を打診するべきなのか、予め考えておくと良いでしょう。また、その他の企業の企業法務従事者は、自社の経済的体力に照らして危機に突入した際の準備を予めしておくとよいでしょう。

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