東京地裁でロッテ取締役側勝訴、役員解任の訴えについて
2021/04/26 商事法務, 会社法, その他

はじめに
ロッテ創業者の長男、辛東主氏が日本のロッテホールディングス取締役を努める弟の辛東彬氏の解任を求めていた訴訟で22日、原告側が敗訴していたことがわかりました。解任事由に該当しないとのことです。今回は会社法の役員解任の訴えについて見直していきます。
事案の概要
報道などによりますと、辛東彬氏は昨年3月に日本のロッテホールディングスの取締役および会長に就任したところ、同氏の弟で同社株主の辛東主氏が同年6月の定時株主総会で解任を要求したとされます。辛東彬氏が韓国前大統領時代の国政介入事件で有罪判決を受けていたことを理由としていましたが株主総会で否決され、その後東京地裁に解任を求め提訴していたとのことです。
役員解任の訴えとは
役員の職務執行に関し、不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があったにもかかわらず、解任の議案が否決された場合には当該役員の解任を求める訴えを裁判所に提起することができます(会社法854条)。役員として問題がある場合には本来株主総会の決議によって解任することとなりますが、多数派によって否決されてしまうということも考えられます。そこでそのような場合でも一定の要件のもと、少数派株主に是正の途を確保しております。以下具体的に要件を見ていきます。
役員解任の訴えの要件
役員解任の訴えを提起する前提として、上記のように株主総会で解任議案が否決されていることが必要です。そして提訴する株主は議決権の3%以上または発行済株式数の30%以上を保有している必要があります。なお公開会社である場合は提訴の時点で6ヶ月の保有期間がなくてはなりません。この株式保有数は単独である必要はなく、複数の株主で合同で行使することも可能です。解任の訴えで被告となるのは当該役員および会社です(855条)。提訴後に当該役員が退任した場合には訴えの利益を失うと言われております。
役員解任に関する裁判例
取締役が期間満了退任または辞任した場合でも、員数不足によりなお取締役としての権利義務を有する場合(346条1項)は当該取締役を訴えによって解任できないとされております(最判平成20年2月26日)。この場合の取締役の地位は会社法によって強制されており、また後任の役員や仮役員を選任することで地位を奪うことが可能だからです。解任が認められた例として、取締役が会社設立以後約2年半にわたって株主総会の招集を怠っていた場合や(東京地裁昭和28年12月28日)、取締役が会社と自己の会計処理を混同し、会社の資金を私的に流用していた例(大阪地裁平成5年12月24日)があります。逆に取締役に就任する以前の不正行為は解任事由には該当しないとされております(京都地裁宮津支部平成21年9月25日)。
コメント
本件で辛東彬会長への解任請求理由は韓国内での2017年の国政介入事件で有罪判決を受けたこととされております。これに対し会長側は、韓国での有罪判決を個人の不正行為によるものではなく、政治的問題によるハプニングであると反論していたとされます。東京地裁はそれらの事実を十分に認識した上で取締役に選任されたことから、欠格事由にもあたらず解任事由にも該当しないとしました。以上のように株主総会で役員解任議案が提出された場合、否決されてもその後に解任の訴えが提起されることが有りえます。通常は同時に職務執行停止の仮処分が申し立てられ、場合によっては職務代行者が選任されることがあります。役員の地位に疑義が生じている場合にはどのように手続きが進んでいくのかを予め把握しておくことが重要と言えるでしょう。
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