4月1日から施行、改正高年齢者雇用安定法について
2021/01/18 労務法務, 労働法全般, その他

はじめに
今年4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行されます。努力義務ではあるものの、定年や継続雇用制度が70歳まで繰り上げられます。今回は今年施行予定の改正点について概観していきます。
改正の経緯
今回の改正は少子高齢化が急速に進む現在の日本社会で、経済の活力を維持するため働く意欲のある誰もが年齢にかかわらず能力を十分に発揮することができるよう、高年齢者の活躍できる環境整備を図ることを目的としているとされます。日本の15歳から64歳までの人口は1995年頃をピークに減少の一途を辿っております。一方内閣府の調査では高年齢者のうち85%近くが65歳までは働きたいと回答しているとのことです。そこで高年齢者雇用安定法は1971年の制定以来改正を重ね、段階的に高年齢者の雇用を確保する制度を導入してきたとされます。
現行制度の概要
2012年に改正され翌2013年4月1日に施行された現行高年齢者雇用安定法では概ね次のような内容となっております。まず60歳未満の定年が禁止されております(8条)。この点については1994年改正で導入され、一般的に広く知られておりますが、事業主が定年を定める場合は60歳以上としなければなりません。そして定年を65歳未満に定めている場合は①65歳までの定年引き上げ、②定年制の廃止、③65歳までの継続雇用制度の導入のいずれかを措置を講じる必要があります(9条)。継続雇用制度とは再雇用制度や勤務延長制度などを指し、適用者は原則として希望者全員とされております。
改正点の概要
今年4月1日から施行される改正法ではこれまでの措置に加えて次の措置を講じる努力義務が課されます。①70歳までの定年引き上げ、②定年制の廃止、③70歳までの継続雇用制度の導入、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に事業主が実施する社会貢献事業または事業主が委託・出資する団体の社会貢献事業に従事できる制度の導入のいずれかとなります。③~⑤については対象者を限定することも可能ですがその場合は過半数労働組合等との合意を得ることが望ましいとされております。
留意事項
厚労省の資料によりますと、上記高年齢者就業確保措置を講じるに当たっては、いずれの措置を講じるかについて労使間で十分に協議を行い、高年齢者のニーズに応じた措置を講じること、個々の高年齢者の希望を聴取し、これを十分に尊重して決定すること、高年齢者が従前と異なる業務等に従事する場合には必要に応じて研修や教育・訓練等を事前に実施することが望ましいとされております。また継続雇用制度を採用する場合、70歳までは更新ができる措置を講じ、むやみに短い契約期間にしないこと、可能な限り当人のニーズや知識、経験・能力に応じた業務内容にすることが求められております。
コメント
高年齢者雇用安定法は制定以来幾度もの改正を重ねており、1986年改正で60歳定年が努力義務化、1990年改正で65歳までの継続雇用推進、1994年改正で60歳定年が義務化、1996年改正でシルバー人材センター事業拡充、2004年改正で定年引き上げ等の措置の義務化、2012年改正で継続雇用制度の拡充がなされ今回の改正に至っております。60歳定年が努力義務化された1986年改正から35年を経て70歳定年が努力義務化となります。少子高齢化の進行に伴い、労働者人口の減少は今後も継続していくことが見込まれることから、高年齢者の雇用確保に向けた制度改革は今後も続いていくことが予想されます。4月の施行に向けて自社の労務方針を改めて見直しておくことが重要と言えるでしょう。
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