RIZAPが子会社を経営統合、株式移転について
2021/01/14   商事法務, 戦略法務, 会社法, その他

はじめに

RIZAPグループは先月18日、カジュアルウェア専門店を運営するジーンズメイトなど3子会社を株式移転の方式により経営統合する旨発表しました。3社は上場廃止し、その後親会社となるREXTがジャスダックに上場を目指すとのことです。今回は経営統合の手法の1つである株式移転について見ていきます。

事案の概要

 報道などによりますと、「ワンダーコーポレーション」「HAPiNS」「ジーンズメイト」の3社は株式移転によって経営統合し、新たに設立される「REXT」が3社の完全親会社となるとされます。強靭な経営体質への変革、事業の選択と集中を柱とする持続的経営戦略をとるRIZAPグループは、そのコア事業である「ライフスタイル」セグメントに属する3社の経営資源を集約し競争力を強化することを目的としているとのことです。効力発生日は2021年4月1日でRIZAPグループがREXTの株式69.8%を取得し子会社となる見通しです。

株式移転とは

 株式移転とは、1社または複数の株式会社の株式を新しく設立する株式会社に100%取得させ、代わりに新設する会社の株式を交付するというM&Aの手法の1つです。似た制度として株式交換というものも存在しますが、こちらは新設会社ではなく、既存の会社に株式を100%取得させるという点が異なります。完全親子会社関係を創設するという意味では効果は同じです。合併と違い1つの会社にすることなく複数の会社をグループ化したい場合に適した組織再編方法と言えます。

株式移転の手続き

 株式移転の手続きの流れはおおむね次のとおりとなります。①株式移転計画の策定、②取締役会での承認、③書面の事前備え置き、④株主総会での承認決議、⑤登記申請、⑥書面の事後備え置きの順で進みます。株式移転の場合は効力発生日後登記することによって完全親会社が設立されることから株式交換のように契約を締結するのではなく当事会社が株式移転計画を策定します。それには設立する会社の目的や商号、本店所在地、発行可能株式数や役員など通常の会社設立の際と同様の事項に加え完全子会社となる当事会社の株主に交付される社債などがある場合はそれらの事項、新株予約権者に親会社の新株予約権を交付する場合はそれらの事項も記載することとなります。そして株式移転計画の概要や計算書類などを備え置き、株主総会の特別決議による承認を経て登記と移転した株式の数や種類等を記載した書面の備え置きを行います。

債権者異議手続きと登記

 株式移転では、株式交換と同様に当事会社の株式が移転するだけであることから原則として債権者異議手続きは不要です。ただし完全子会社となる会社が新株予約権付社債を発行しており、完全親会社が承継する場合には債権者異議手続きが必要となってきます。社債の債務者が代わることになるからです。そして登記についても同様で新株予約権の承継がある場合のみ必要となり、合併や分割と異なって株式移転それ自体は登記事項ではありません。

コメント

 本件でジーンズメイトなど3社は2月18日開催予定の臨時株主総会での承認を経て3月末に上場廃止となり、4月1日にREXTの完全子会社となる見通しとなります。このように株式移転は1つまたは複数の株式会社を合併することなく新たに設立する会社の完全子会社としてグループ化することができます。合併は最も一般的なM&Aの手法ですが社風や方針が異なる企業を1つのしてしまうことのデメリットも多いことからこのようにグループ化する手法も好まれております。また合併のように多額の合併資金を準備する必要も無いため利用しやすい側面もあります。新型コロナウイルス感染拡大により組織再編を必要としている企業も多いと思われます。どのような手法が自社にふさわしいかを慎重に見極めていくことが重要と言えるでしょう。

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