LINEが上場廃止へ、株式併合と単元株式数について
2020/11/13 商事法務, 戦略法務, 会社法, その他

はじめに
LINEは9日、取締役会で株式併合と単元株式数の定めを廃止する旨決定しました。今後LINE株は整理銘柄に指定された後上場廃止となる見込みとのことです。今回は単元株式制度と株式併合について見ていきます。
事案の概要
報道などによりますと、ソフトバンクとNAVERは今年8月から公開買付でLINE株を買い集め、現在両社で84.62%の議決権割合を保有するにいたっているとされます。100%の取得にはいたらなかったため、今後株式併合を行い、それを条件として単元株式数の定めも廃止する旨の定款変更を行うために臨時株主総会の招集を予定しているとのことです。29,165,333株を1株に併合する予定とされております。
単元株式制度
単元株式制度とは、定款で一定数の株式を1単元と定め、1単元につき1つの議決権を与えるという制度です(会社法188条1項)。増えすぎた株式を一定数にまとめ管理コストを削減する効果があります。1単元の株式数には制限があり、発行済株式数の200分の1と1000株を超えることができません。例えば既に10万株発行している会社は1単元500株が限度となります。単元株式制度を導入するには原則として株主総会の特別決議を要します。ただし例外として株式分割と同時に行い、結果として株主の議決権が減少しない場合は取締役会決議や取締役の過半数で決定することができます(191条)。
株式併合
株式併合とはいくつかの株式を1株に圧縮する制度です。これにより増えすぎた株式を減少させ、管理コストを削減したり、下落しすぎた株価を上昇させ、また組織再編に際して残存する少数株主を締め出したりするといった効果があります。単に株式数が増えるだけの株式分割と異なり、株主に与える影響は大きいことから株主総会の特別決議による必要があります(180条2項、309条2項)。そして決議に際しては①併合割合、②効力発生日、③併合する株式の種類、④効力発生日における発行可能株式総数を定める必要があります。この発行可能株式総数は変更が無い場合であっても必ず定めることとなります。またこれにより特定の種類株式の株主に損害を及ぼす恐れがある場合には、その種類株主総会の特別決議も必要となります(322条1項2号、324条2項4号)。
反対株主の対応
株式併合が法令または定款に違反し、株主が不利益を受ける恐れがある場合には株式併合の差止請求をすることができます(182条の3)。これは平成26年会社法改正で導入されたものです。また株式併合により1株に満たない端数が生じる場合は、反対株主はその端数を公正な価格で買い取ることを請求することができます(182条の4)。多くの端数が生じる場合は株価の下落が生じ、適切な対価が交付されないおそれがあるためです。なおこの買取請求は株式併合の効力発生日の20日前から効力発生日の前日までに行う必要があります。(同条4項)。
コメント
本件でソフトバンクとNAVER社はLINEと経営統合すべく、日本と米国で公開買付を行い株式を買い集めておりました。それにより85%近くの株式を取得するにいたりました。そこで残存少数株主を排除するため29,165,333株を1株に圧縮する株式併合を行い、単元株式も廃止する予定としております。これにより支配株主以外の株主は1株に満たない端数を保有することとなり金銭処理されることとなります。このように株式併合は単に株式数や株価の調整、管理コストの削減だけでなく、組織再編の手段にも利用されます。なお90%以上株式を取得した場合は特別支配株主による売渡請求が可能となります。株式併合や株式分割、単元株式制度など、会社法上の株式や株価、株主の管理の手段について正確に把握し、適切に利用していくことが重要と言えるでしょう。
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